研究代表者はこれまでに,車両の走行制御には車輪の駆動力を用い,車体の倒立制御にはビークルの重量物を重りとして移動させる重心移動を用いる「低重心型同軸平行二輪ビークル」を開発している.低重心型同軸平行二輪ビークルは経験的・実験的に製作されてきたため,様々な用途に適用を拡大するには仕様に合わせて寸法や重量,重心位置の制限,重心移動を行うアクチュエータなどの機構を最適に設計する必要がある.また,研究代表者のこれまでの研究において,本ビークルの機構だけでなく搭乗者や搬送物の寸法や質量,重心位置の違いにより,車体揺動の減衰比や固有角周波数などの挙動特性がそれぞれ異なることが明らかになっており,搭乗者や搬送物を含めた本ビークルの挙動特性の変化に対応した最適な制御系設計が必要である. 令和4年度では,搭乗者や搬送物に相当する重りを様々に変更できる機構を低重心型同軸平行二輪ビークルに構築した.従来研究では,移動方向と同一方向の1軸駆動で重りを移動させて重心位置を変化させた. 本研究では,ビークルの移動方向である前後方向に加えて上下方向の駆動を増加させた2軸方向に駆動可能な「2自由度重心移動機構」を構築した.実機実験により,2軸の重心移動により車体傾斜に影響を与えることを確認した. 令和5年度では,低重心型同軸平行二輪ビークルの挙動を外部から計測する全方向移動ロボットを構築した.この計測ロボットは,低重心型同軸平行二輪ビークルと並走して画像撮影を行い,画像認識により車体の傾斜角度計測および車輪の回転角度計測を行う.急停止時や車輪ロック時の外乱入力などで車体傾斜と連動して車輪が回転する場合があり,車体側に搭載された車輪モータのロータリエンコーダではこの回転情報を得られない.構築した計測ロボットにより,走行時の車体と車輪の挙動を計測でき,減速機のバックラッシュの影響を排除したモデル検証に利用できる.
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