研究課題/領域番号 |
22K14218
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
干場 功太郎 東京工業大学, 工学院, 助教 (50782182)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ドローン聴覚 / マイクロホンアレイ / 音響センシング |
研究実績の概要 |
初年度はドローン聴覚による地表の音響センシング実現に向けた,初期検討を行った. ・音響センシングアルゴリズムの開発:ドローン搭載スピーカー・マイクロホンアレイを用いた地表の音響センシングのための基本となるアルゴリズムを開発した.本手法では,音源定位手法として用いられているMUSIC (multiple signal classification)法を応用した手法であり,ドローン搭載のスピーカーから照射された音響信号が地表の各所で反射し,その反射波の伝搬時間と方向を得ることによりセンシングを行う. ・スピーカー・マイクロホンアレイシステムの開発:センシングのためのスピーカー・マイクロホンアレイセンサを構築した.高出力・軽量なスピーカーと,16ch同期収録可能な小型マイクロホンを用いた.また,高精度・広範囲の計測のための最適なパラメータについても検討を行った. ・雑音耐性の強化,リアルタイム性の強化:上記のアルゴリズムについて,ドローン自身の大きな雑音が存在する状況であっても実時間でセンシングを行うことができるよう,処理コストの低い雑音除去手法の開発を行った.本手法では,統計情報を用い,得られる情報の中から雑音によるものと目的音によるものを区別し,目的音のみを抽出することで雑音の影響を除去し,SNR (signal-to-noise ratio)が低い状況でも高精度に反射波の伝搬時間・方向を得ることができる. 上記を屋外実環境でドローンを飛行させ,評価を行った.その結果,高度5mでの飛行中に,約2m四方の範囲の地面を数十cmの精度でセンシングすることができた.また,SNRが低い状況であっても,実時間で雑音除去の処理を行うことができ,本手法の有用性を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・音響センシングアルゴリズムの開発:音響信号処理の検討については計画通り進展したが,1条件の解析が現実的な時間で終わらないと想定されたため,シミュレーションによる評価ができていない.代替として,2023年度より本格的に行う計画だった屋外飛行実験を計画よりも多く行い,それにより評価を行った. ・スピーカー・マイクロホンアレイシステムの開発:センシングのためのセンサの構築は行ったが,半導体不足の影響によりマイクロホンが十分数入手できなかったため,センサの配置やサイズについては検討できていない.代替として,センシングの際の最適なパラメータについての検討を行い,センシングの高精度化・広範囲化を実現した. ・ドローン上でのセンシングに向けたアルゴリズムの最適化:上記2項目にて計画通り進展できなかった内容があったため,2023年度以降に進める計画であった雑音耐性の強化・リアルタイム性の強化について前倒しで取り組んだ.その結果,統計情報を用いて雑音の影響を実時間で除去する手法を開発した.
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今後の研究の推進方策 |
2年目は実環境での使用を考慮したシステムの開発・改良に取り組む. ・最適なセンサの設計:1年目に行うことのできなかった,マイクの位置やアレイのサイズについての検討を行う. ・アルゴリズムの最適化:雑音耐性・リアルタイム性の強化について引き続き取り組むとともに,シングルボードコンピュータでの処理に向けたアルゴリズムの最適化を行う. ・新たに判明した,センシング中にドローンの位置が不確かであるという問題に対して,絶対的な位置の不確かさを考慮したセンシングアルゴリズムおよびセンシング結果の統合手法について検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は,半導体不足によりマイクロホンを入手することができなかったためである.本残高は,入手可能となり次第マイクロホンを購入するために使用する予定である.
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