研究課題/領域番号 |
22K14223
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
部矢 明 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80911297)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アクチュエータ / ハイブリッドアクチュエータ / 多自由度アクチュエータ |
研究実績の概要 |
本年度は,空圧力と電磁力の2駆動源によって2自由度回転を実現する2自由度空電ハイブリッドアクチュエータの構造および動作原理を提案した。空圧力は120度間隔で配置した空圧蛇腹の伸縮量を圧力制御弁により調整することで生成する。2自由度回転支持された可動子にこれらの蛇腹を取り付けることで,空圧力による2自由度回転を可能とする。また,電磁力は可動子に永久磁石を120度間隔で取り付け,その外側に配置したコイルをすることで生み出す。この構造により,3コイルに印可する電流の大きさと方向を調整することで磁気吸引・反発力とローレンツ力による2自由度回転が可能となる。本アクチュエータではこれらの空圧力・電磁力発生機構を一体化し,可動子に対して両者が働くよう構成したものである。 提案した2自由度空電ハイブリッドアクチュエータのトルク特性を解析から算出した。空圧力によって得られる静トルクは蛇腹の受圧面積と内圧から求めた。電磁力によって得られる静トルクは3次元有限要素法を用いた磁場解析から求めた。そして,運動方程式を導出し,回路方程式,トルク発生式から電磁力により生まれるダイナミクスを計算可能な動的モデルを作成した。この動的モデルに空圧系を追加し,電流制御器と圧力制御器を用いることで,ハイブリッド駆動系を構築した。加えて,閉ループの姿勢制御系を設計し,単軸まわりおよび複数軸まわりへの目標軌道追従から,姿勢制御が可能であることを確認した。また,従来の球面電磁アクチュエータと比較して,提案アクチュエータのトルク密度は約7倍程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,空圧力と電磁力の2駆動源によって2自由度回転を実現する2自由度空電ハイブリッドアクチュエータの構造および動作原理の提案を計画していた。電磁駆動部は3コイル2自由度電磁アクチュエータの構造をベースに設計した。空圧駆動部は3つの蛇腹型空圧アクチュエータを配置し, 2自由度受動回転機構を有するピストンでそれぞれを連結することで構築した。そして,電磁駆動部と空圧駆動部を一体化することで本アクチュエータの実現に至った。電磁トルクは3次元有限要素法解析からその特性を明らかとし,空圧トルクは蛇腹の形状と圧力から数値計算により求めた。加えて,本アクチュエータの電磁トルクは姿勢変化によってトルク定数が異なるため,2自由度回転時にも所望の電磁トルクを発生可能なトルク制御法を提案した。さらに,3つの蛇腹機構から得られる空圧トルクを制御する方法を提案し,導出した空電動的モデルから理論的に姿勢制御可能なことを示すことができた。そのため,順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,2自由度空電ハイブリッドアクチュエータのコンセプトを提唱し,理論的に駆動可能であることを示した。今後は,提案した2自由度空電ハイブリッドアクチュエータの試作機を製作し,実際に動作可能であることを示す。まず,力センサを用いて試作機の電磁トルクと空圧トルクを測定する。電磁トルクは3コイルに対してそれぞれ任意電流を直流安定化電源から供給することで得る。空圧トルクは,圧力制御バルブとコンプレッサにより蛇腹を加圧することで発生する。そして,圧力制御バルブの応答遅れ特性と摩擦特性を実機から同定し,空圧のみで2自由度回転可能であるかを検証する。その後,フルブリッジインバータを用いて,電磁力により回転可能であることを確認する。最後に,両システムを組み合わせ,ハイブリッド姿勢制御系での実機検証を行う。軌道追従制御から駆動特性を確認し,改良が必要な機構・部位においては再設計を行い,検証を繰り返す予定である。
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