研究課題/領域番号 |
22K14227
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安藤 潤人 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (50899797)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ソフトロボット学 / 触覚学 / ハプティクス / 触覚センシング |
研究実績の概要 |
新たな触覚増強機能を持つ構造体の作製に成功した.以前から提案されている剣山型の構造体では凸形状の面ひずみに関しては強く反応し,ヒトやセンサ素子に関して触覚情報を増強させる効果があった.しかしながら,凹み形状の面ひずみに関しては反応が弱く,検出が困難であった.柔軟構造体が表面形状に沿うことで変形し,その変形が皮膚やセンサ素子に伝搬している.この伝搬された変形が柔軟構造体の介在なしで触れたときの変形より大きくなることで触覚増強が生じている.触覚増強効果が弱いということは表面形状に沿っていないことが考えられる.そこで凹み形状でも沿うような柔軟構造体を開発した.新たな構造体はコイル構造を横に並べた構造である.この構造は凹みでも沿うことができ変形を伝搬させることができる.従来の提案されている触覚増強の機能を持った柔軟構造体と比べて凹みの感度が強い.しかし,凸に対する感度が弱くなってしまった.この要因は現状では未解明であり,今後の課題である. 今回の成果によって凸面、凹み面のそれぞれに対する触覚増強の現象を確認することができるようになった.その典型的な形状である凹凸形状に対する触覚増強の現象を観測し、分析することで触覚増強メカニズムの理論構築に役立つ.さらに凹凸の両方に対応した触覚増強機能を持った柔軟構造体の設計に役立つ.今後は触覚増強に寄与する設計パラメータの分析及び、新たな触覚増強機能を持った柔軟構造体の開発を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では「微小な刺激に敏感な人工皮膚構造の開発」を目的としている.微小な刺激として物体表面上の微小な凹凸を取り扱っている.この微小な凹凸は深さや高さが数μmを指している.本年度は微小凹凸に敏感になるように触覚増強メカニズムに基づく柔軟構造体の検討に取り組んだ.従来の研究では微小凸に敏感な触覚コンタクトレンズと呼ばれる柔軟構造体が開発されている.しかしながら,凹みに関しては鈍い問題があった.そこで凹みに関しても敏感な人工皮膚構造の開発を試みた.微小な凹みに沿わせて、微小凹みからの刺激を拡大できる構造を開発した.この構造は単一の材料からできており,当初考えていたマルチマテリアルの構造ではない.硬い材料ではあるが,構造によって柔軟性を保持している.今後は材料も考慮して構造体の設計を試みる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果によって微小凹みに関して敏感な柔軟構造体を作製することが可能となった.しかしながら、微小凹み、凸の両方に敏感な柔軟構造体を作製できていない.研究目的である人工皮膚構造でどちらにも対応できる必要があるため,引き続き,触覚増強機能を持った柔軟構造体の検討を行う.従来研究と合わせて,微小凹凸、それぞれに対応する柔軟構造体を作製することができている.2つの構造体の微小凹凸の刺激に対する動きを解析し,触覚増強メカニズムを考察していく.それぞれの触覚増強に関する要素を抜き出し、再構築することで,微小凹凸に対応した柔軟構造を開発できると考えている.今後は人工皮膚構造の設計要素を抜き出すための理論的な整理と柔軟構造体の解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画で考えていた装置は価格高騰により購入困難になり,次年度以降の購入を検討している.さらにマルチマテリアルの設計を十分な検討をできていないため、検討を行った上で,必要最低限の装置の購入を検討している.
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