研究課題/領域番号 |
22K14228
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 文人 福岡工業大学, 工学部, 助教 (10909419)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / 非接触把持 / 柔軟鋼板 |
研究実績の概要 |
本研究は、非常に薄く柔軟な鋼板を磁気浮上によって非接触に支持する際の安定性を飛躍的に向上させる方法として鋼板の板厚方向を水平方向として浮上させるマグレブシステムを実現するものである。当該年度は本研究で対象とするマグレブシステムの実現に向け、本システムでの浮上環境における柔軟鋼板の振動特性や電磁石の吸引力特性といった基礎的な特性について検討した。特に下記の3点の内容を中心に検討を行った。 (1)弾性振動を考慮した柔軟鋼板のモデル化:柔軟鋼板を磁気浮上させた際、電磁石からの入力や外乱によって弾性変形や振動が柔軟鋼板に発生することが想定される。このような変形や振動は磁気浮上制御において外乱として作用し、落下に寄与することが想定される。そのため、浮上中における柔軟鋼板の形状や振動特性をマルチボディダイナミクス(MBD)によって明らかにした。 (2)浮上を実現する電磁石特性の決定:これまでの磁気浮上システムとは異なり、鋼板端部を把持することから、鋼板の自重とつり合う吸引力を発生できる電磁石の設計が求められる。そのため、有限要素法を用いた電磁界解析により電磁石コイルに電流を流した際の解析モデルを構築し、静的状況下で鋼板を浮上できる吸引力を発生可能な電磁石について明らかにした。 (3)磁気浮上装置の製作:磁気浮上システムは強い非線形性を持つことから、解析結果を基に設計した制御器を検証するためには実機を用いた実験が不可欠である。そのため、現有の磁気浮上装置を参考にし、本研究で提案する磁気浮上を実現する装置を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)弾性振動を考慮した柔軟鋼板のモデル化:マルチボディダイナミクスを用いて板厚方向を水平方向とした際の振動特性を明らかにした。また、柔軟鋼板を用いた実験も実施し、各方向への変位が異なる方向の変位へ及ぼす影響についても明らかにした。 (2)浮上を実現する電磁石特性の決定:有限要素法による電磁界解析から電磁石コイルの電流による吸引力特性の変化について明らかにした。この結果を基に実際に浮上可能なコイル電流および電磁石-鋼板間ギャップについても明らかにし、実用的な電流・ギャップ条件下において浮上を実現できることを明らかにした。 (3)磁気浮上装置の製作:次年度以降に行われる電磁石の特性評価や磁気浮上実験に向けて本研究で提案する方式を適用した磁気浮上装置を製作した。本年度はバイポーラ電源、多入出力制御システム、レーザ変位センサ、渦電流式変位センサを設置し、先行研究での電磁石を用いて吸引力を制御するシステムを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)振動モデルを考慮した制御理論の構築:本年度に実施したMBDで得られた柔軟鋼板の振動特性を基に制御理論を構築する。ここでは柔軟鋼板の厚さや剛性に対し、ロバスト性を持つ制御理論を構築するため、MATLAB/Simulinkを用いて柔軟鋼板の振動特性を考慮した制御シミュレーションを実施する。ここで検討した制御理論は今後の磁気浮上実験に活用する。 (2)電磁石の製作と特性の評価:前年度に確立された電磁界解析を用いて、異なる板厚の柔軟鋼板における吸引力特性を明らかにする。解析で得られた結果より、多様な板厚で浮上を実現可能な電磁石を設計・製作する。また、製作した電磁石の吸引力特性や応答性を実験的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
磁気浮上装置に導入する変位センサを購入する予定であったが、納品の状況により本年度の研究計画に支障をきたさない範囲で一部を次年度に購入するよう計画を変更した。次年度は研究計画通りに電磁石製作に係わる物品の購入に合わせて、本年度に購入を見送った一部のセンサを購入する。
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