研究課題/領域番号 |
22K14271
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
井上 敏之 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (90757709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非接触 / 電波センサ / 赤外線カメラ / 深層学習 / FPGA |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染リスクの少ない保育・介護施設のためのバイタルモニタリングシステムの開発が急務となっている.電波センサでは,衣服や布団等を透過して非接触・非拘束で心拍数や呼吸数の検出が可能である.そこで,保育・介護施設のための新型コロナウイルス感染リスクの少ないバイタルモニタリングシステムの開発を目的とし,電波センサと赤外線カメラを組み合わせた新しい非接触バイタルモニタリングシステムを提案している. 提案システムの構築において,PCと比較して小型かつ低消費電力で,深層学習における並列演算を高速に実行可能なFPGA(Field-Programmable Gate Array)の使用が望ましい.まず,赤外線カメラの熱画像をFPGAに取り込み,簡易な画像処理を施したのち,画像出力を行うために,赤外線カメラ画像入出力インターフェースおよび画像処理ブロックの開発を行った.画像処理のアルゴリズムの特徴に着目し,複数の対象領域に対する画素値のソートの際に,隣接する対象領域において共通して使用する画素値情報を共有することにより,リソース使用量を低減し,並列処理による高速化を可能とした. 心拍波形は各個人に固有のものであるとされており,この特徴から各心拍波形がどの個人のものであるかを特定すること(個人識別)が可能となる.電波センサにより取得した心拍データに対して深層学習を適用することにより,個人識別を可能とするシステムの構築を行った.FPGAを用いた個人識別インターフェースの開発により,最大で10人程度の識別を可能とし,識別精度90%程度を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施初年度において,本研究課題のコア技術にあたるFPGAを用いた赤外線カメラ画像の取得および簡易な画像処理の適用が可能となり,今後予定している画像処理高度化の準備が完了したと考えている.また,FPGAを用いた電波センサ取得信号に対する個人識別動作が実証できており,実用上最低限必要な10人程度に対する適用可能性が確認できている.
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今後の研究の推進方策 |
赤外線カメラにより得られる熱画像温度分布から,対象者の体温情報の抽出を行う.使用する赤外線カメラの画角,画素数,測温精度等の必要スペックを検討し,対象者の体温を測定する技術を確立する.部屋内の床上に存在する複数対象者の位置推定を行うために,まず,赤外線カメラの熱画像を複数のセンサ角度で取得して二次元の熱画像マップを作成し,対象者の存在位置を限定する.つぎに、電波センサを熱源方向に向けて信号を取得することにより,取得信号に含まれる生体情報の有無により対象者の有無の判定および位置推定を行う.同時に,前年度に確立した個人識別技術により各位置に存在する対象者を特定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,高周波信号処理用FPGAボード(1,450,000円)を購入予定であったが,赤外線カメラ画像入出力インターフェースの基本動作実証に限り,所有している汎用FPGAボードで十分であると判断し,当該年度での購入を見送った.次年度以降,要求スペックを精査したうえで,適切な製品購入を予定している.一方で,提案システムのASIC(特定用途向け集積回路)のためのCMOSチップ設計・作製を前倒して進めている他,次年度以降の測定・評価において必要となる各種コンポーネントの整備のために当該年度予算を使用した.
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