データから対象システムを①同定するまたは②制御する際,どのようなデータがどのくらい必要であるかを明らかにすることは本質的に重要である.この視点に立ち,以下の2つの成果を得た. データから対象の動特性を把握する手法はシステム同定と呼ばれ,様々な研究が行われてきた.しかし,それらの殆どはデータが十分に与えられていることを前提としており,不足時にどの程度の精度で同定できるかは十分に明らかにされていなかった.この問題に対して,対象システムの可到達性・可観測性に応じた新しい同定誤差解析を与えた.これは,VARXモデルとよばれるシステム同定でよく用いられるシステム表現形式が伝達関数のような入出力特性を表現しつつも状態空間モデルのように代数演算と相性がよいことに着目し,モデル低次元化と呼ばれる隣接領域の解析手法も併用することで導出に成功した. データから直接的に制御器設計を行う手法は直接法と総称される.一方,データに基づく制御器設計には,システム同定ののちに従来のモデルベース制御器設計法を適用する間接法と総称されるアプローチも存在する.本研究では,実応用上きわめて重要な動的出力FB制御器設計において,前者と後者がある意味で等しいことを明らかにした.この鍵は先に導入したVARX Modelを用いた新しいシステム表現とそれに基づく数学的ツール(VARX Frameworkと総称)の開発にある.さらに,その等価性ゆえに,ある種の双対性がみられることも確認した.
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