研究課題/領域番号 |
22K14302
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神野 崇馬 大阪大学, 大阪工業大学, 講師 (70885508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電磁ポテンシャル / 電磁ノイズ / 放射 / 集中定数回路 / 電磁回路 |
研究実績の概要 |
電磁気学現象を利用して、我々の生活は飛躍的に便利になってきた。電磁気学現象はMaxwell方程式を原理として応用が進んでいるが、実用上、電気回路内の伝導現象と外部への放射現象は切り離されて発展してきた。しかし、近年では予期しない放射が電磁ノイズの原因となり、現場における製品開発の遅延などの問題を引き起こしている。現在の回路設計には、伝導と放射を統一した電磁ノイズの解析手法が必要とされている。本研究は、電磁ノイズ現象を考慮した回路設計を実現するために、伝導と放射現象の基本的な物理変数である電磁ポテンシャルを用いて、伝導と放射現象を統一したシミュレーション手法の確立と実験による検証を目指した。 本年度はシミュレーション手法の確立と実験検証の両方に進展があった。回路解析では、集中定数回路の接続や、誘電体などの媒質を考慮することが必要とされており、本研究手法でも達成することができた。これにより、汎用に用いられているプリント基板配線のシミュレーションを実現した。さらに実験では、時間領域反射法(TDR法)を用いることで、プリント基板に流れるノーマルモード電圧やコモンモード電圧を測定した。その結果、回路形状によって、コモンモード電圧が伝搬の際に放射によって減衰することを確認した。さらに、本年度開発した手法により、これらの実験結果を再現することに成功した。この結果から、実験では端子電圧しか測定できなかったが、シミュレーションにより、基板全体を電磁ポテンシャルがどのように伝搬し、回路のどのような形状が原因となっているのかを確認することができた。これにより、シミュレーション環境で電磁ノイズ特性を評価することが可能になり、開発における試作を減らし、開発期間の短縮に役立てることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展している。当初の計画では、シミュレーション手法の考案に向けて、(1)集中定数回路との接続、(2)誘電体の分極の影響を考慮、(3)オームの法則の量子効果の考慮、の3つを取り入れることを目標としていた。今年度では(1)と(2)を実現することができた。それらの成果は論文投稿し、既に公開済みである。今後は(3)について検討することで、より高い周波数における導体内の伝導と放射現象の関係を明らかにする。 さらに、計画(4)にあった実験検証については、時間領域反射法(TDR法)を用いた実験を行い、実験とシミュレーションから概ね一致した結果を得ることができた。これにより、放射の有無による違いを反映した結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針として、これまでに開発したシミュレーション手法の妥当性を検証するために、さらなる実験手法の検討を行う。本年度の予算でベクトルネットワークアナライザを導入した。これにより、周波数領域での伝達特性の評価実験を行うことができるようになった。次年度には、フィルタやアンテナなどのパターンを設計することにより、本研究で考案した電磁ポテンシャルを用いたシミュレーションが実験を再現できるか、周波数領域における妥当性の確認を実施する。 さらに、電磁ポテンシャルを用いた回路シミュレーションの応用例は少ないため、新たな回路解析手法の探索を行う。特に、電磁ノイズ解析に着目し、回路の形状から電磁ノイズ定量化の実現を目指す。
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