研究課題
運動量・熱に関する大気と海洋の相互作用は台風や大気循環を通して,高潮,風速,さらに降雨へも影響を及ぼす.この相互作用の効果は,現在の数値モデルでは波浪による海面の凹凸やしぶき,乱れが考慮されておらず,風速のみで簡易に取扱われている.そこで本研究では,大気海洋観測塔を用いた大気・海洋集中観測を実施し,詳細な波浪形状や砕波率等,数値モデルで扱われる海面の情報から相互作用の効果を説明するモデルを構築する.構築したモデルの効果は,海洋からの影響が重要な台風や,大気海洋の相互作用が長期的に影響する大循環をシミュレーションすることによって,定量的に評価することを目標としている.初年度は大気海洋の同時観測を実施し,観測データの充実を図った.2022年度の観測データはすでに回収を終えており,今後,統計的解析やモデル化を進める.運動量・熱交換量の取り扱い手法が変わることによる高風速下における定量的な評価のため,大気海洋結合モデルによる理想台風実験環境を構築した.大気海洋結合の理想台風実験では台風の発達だけでなく,高風速下における海洋流動や混合にともなう水温低下が表現可能になることを確認した.試行的にJRA-55とFORA-WNP30から大気海洋の気候値を抽出し,CMIP6から大気および海洋のシナリオ別将来変化量を抽出して,現在気候と将来気候における理想台風実験を行った.将来気候において台風強度は強くなるものの,海水温変化に対して非線形な応答を示すことを確認した.
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた大気海洋同時観測を実施し,計画通り進展した.
現地観測を引き続き行うことで観測データの充実を図るとともに,回収済みの観測データの解析およびモデル化を進める.また,モデル置き換えによる影響評価のベースとなるコントロールランの計算を進める.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Coastal Engineering Journal
巻: 64 ページ: 151~168
10.1080/21664250.2021.2017191
Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. B2 (Coastal Engineering)
巻: 78 ページ: I_949~I_954
10.2208/kaigan.78.2_I_949