研究課題
沿岸域の気候変動適応策のために,常時の海面上昇に加えて気象擾乱による高潮および波浪による短時間の海面上昇を考慮した極端海面水位評価の必要性が近年認識され始めた.既往の気候変動下の極端海面水位予測は,高潮レベルが将来にわたり不変という仮定および波浪効果による短時間の海面上昇が未考慮という大きな問題点がある.本研究では,平均海面水位+高潮+波浪効果それぞれの気候変動による変化が考慮可能かつ全球スケールから詳細な沿岸域までの極端海面水位をシームレスに評価するモデルを開発することを目的としている.本年度は,非構造格子モデルによる全球高潮長期計算を実施した.非構造格子を導入することにより外洋で粗い解像度,沿岸域で詳細な解像度で計算することができ,効率的な高潮計算を実現した.気象庁の大気解析値JRA-55を外力として,1958年から2019年にわたり全球で高潮を計算した.この高潮データおよび潮汐モデルにより計算される天文潮位を足し合わせることで,全球沿岸で長期の海面水位データを作成した.観測値との比較を実施し良好な計算精度があることが分かった.さらに,極値統計解析により全球沿岸の極端海面水位を評価した.波浪に関しても高潮同様に過去の長期的な評価を実施した.全球波浪過去再解析データセットを国際的相互比較プロジェクトに提出し,過去の波浪の長期的なトレンドを評価した.全球の30-40%の沿岸で波浪の長期変化が起こっていることが分かった.さらに,高潮モデル同様に,全球波浪モデルの非構造格子化に取り組んでいる.
2: おおむね順調に進展している
研究計画に大きな遅れがなく,高潮および波浪の全球非構造格子モデルを構築できた.
本年度検討した過去の高潮・波浪の変化に加えて,以下について検討する.(1) 全球高潮+波浪結合モデルの開発(2) 気候予測実験にもとづく全球高潮+波浪予測実験の実施(3) 気候変動に伴う極端海面水位の長期変化評価
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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