研究課題/領域番号 |
22K14330
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
Kim Kyeongmin 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 特任助教 (40943650)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 燃料電池型センサー / 含水比計測 / 湿潤密度計測 / 溶存酸素計測 / 酸化還元反応 |
研究実績の概要 |
本研究では沿岸域、特に航路のような人間活動と関連が密接な海底地形の変化をモニタリングするための電位センサーの開発を目指している。 このため、(1)最適な電極素材の検討、(2)水質、低質に対する電位の応答特性の解析、(3)電位以外の新たな電気化学的因子の検討について論文、発表の形で成果を得ている(予定を含む)。 例えば,電位が捉える溶存酸素濃度の特性を利用して、藻類の光合成、赤潮現象などによって年間水質環境が大幅に変わる沿岸域で連続的かつ長期的に水質を計測する電位センサーの実証に成功した。約8ヶ月間連続測定した電位結果をもとに、底層の貧酸素水塊の発生および解消メカニズムを解明した。さらに、機械学習を利用して、電位と溶存酸素濃度の相関関係の長期的変化を学習させ、電位センサーで溶存酸素濃度を計測することに成功しており、この成果を現在Environmental Science and Pollution Researchジャーナルに投稿中である。 本研究の最終目標である泥の挙動を計測することにおいて、電気化学的パラメータで底泥の浸食や堆積のような物理的挙動を計測するために電気抵抗値を因子とする新たなセンサーを開発した。このセンサーは、これまで連続的な計測手法の不在でできなかった台風などのイベント現象発生直後の地形変化を素早く把握するのに活用できる。本研究で開発した電気化学的手法で泥の物理的挙動を把握するセンサーは多様な現象をセンシングする応用可能性があり、経済性、耐久性などの面で長所があるため、今後沿岸域での多様なセンサーへの発展が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
総合的な評価においては、ほとんどの調査項目について順調に進行中か目標を達成した状態と位置づけている。本研究で提案した調査項目において、概略的な進行状況を次のようにまとめる:(1)電極素材の検討:電位を測定する電極素材は大きく金属と炭素に分類され、金属の場合白金とチタン、炭素の場合黒鉛、炭素繊維を選定して電位計測特性を比較分析した。金属と炭素は電極内部に電子を積む容量(静電容量)に大きく差があり、これによって決定される電位計測特性の違いを利用して現地の水質を把握するメカニズムを提案した。 (2)土粒子の電気特性の把握:土粒子の電気透過特性を利用して、堆積泥に電気を流して抵抗値から堆積状況を判断するセンサーを開発し、現地で実証している。(3)防水電圧計ケースを用いた長期計測:上述の抵抗計測センサーの結果に基づき、長期計測のため現在防水型電圧計を製作するために業者に依頼中である。(4)航路での実証:2022年度10月に港湾空港技術研究所と協力し、本研究で開発したセンサーを航路近くに設置し実証しており、2023年度にも同様の形で調査を行う計画である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を通じてセンサーの計測構造に対する知見を確立しており、これを現地で実用的および長期的に計測できるようにする機能的な改善を行う。当初の計画であった航路の埋没を計測することにおいては、航路内に計測器を設置することは安全上実現することが難しいと把握された。したがって、設置型センサーの代わりに観測船から一時的にセンサーを吊り下げて短期間で堆積状況を把握する形のセンサーのために計測仕組みを変更、改善させる計画である。また、共通目標を持っている論文の著者とセンサーの活用にあたって共同研究を行うなど、本研究で目指す沿岸域、特に航路の埋没を計測する汎用的なセンサーの実現に努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた電圧計防水ケースを利用した長期計測調査の日程が延期され、ケースの製作依頼のための費用、現地調査のための水圧計購入、傭船費などの支出が発生しなかった。 今年度8月頃に現地調査を予定しており、そのために6月前までに必要な物品を購入し、現地調査のための費用を支出する予定である。
|