本研究は海底堆積物の動態を把握するための新しい手法として、海水および堆積物の電気化学特性を利用した新しいセンサーの開発を目的とした。研究期間中、海水及び堆積物の電気化学的特性を明らかにする基礎研究、海水(水質)を対象としたセンサーの開発、堆積物を対象としたセンサーの開発、機械学習を適用したセンサーを用いた水質及び堆積物動態の予測技術の開発に区分されて実施された。 研究期間中、査読論文6編、国内学会口頭発表1回、国際学会口頭発表2回の研究実績を残した。(第1著者論文1編、交信著者2編、招請講演1回。) 例えば,電位が捉える溶存酸素濃度の特性を利用して、藻類の光合成、赤潮現象などによって年間水質環境が大幅に変わる沿岸域で連続的かつ長期的に水質を計測する電位センサーの実証に成功した。約8ヶ月間連続測定した電位結果をもとに、底層の貧酸素水塊の発生および解消メカニズムを解明した。さらに、機械学習を利用して、電位と溶存酸素濃度の相関関係の長期的変化を学習させ、電位センサーで溶存酸素濃度を計測することに成功した。本研究の最終目標である泥の挙動を計測することにおいて、電気化学的パラメータで底泥の浸食や堆積のような物理的挙動を計測するために電気抵抗値を因子とする新たなセンサーを開発した。このセンサーは、これまで連続的な計測手法の不在でできなかった台風などのイベント現象発生直後の地形変化を素早く把握するのに活用できる。
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