研究課題/領域番号 |
22K14331
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井手 喜彦 九州大学, 工学研究院, 助教 (60866680)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ガウス過程回帰モデル / 波浪予測モデル / ニューラルネットワークモデル / 数値シミュレーションモデル / アンサンブル気候予測データ |
研究実績の概要 |
本年度は,新たな波浪予測モデルの基礎として注目しているガウス過程回帰モデルと従来から予測モデルとして存在する数値シミュレーションモデルおよびニューラルネットワークモデルの三つを比較検討することを計画していた.比較は,予測精度,予測速度,学習速度の3項目について行った.予測精度について,極端イベント(台風や低気圧)で生じる大きな波高についての再現性は数値シミュレーションモデルが最も高くなる傾向があり,また,外洋に面したうねりの影響が大きくなる領域においてもニューラルネットワークやガウス過程回帰モデルでは再現できない時間変化を数値シミュレーションモデルのみが再現できている場合が見られた.ただし,内湾や日本海側の比較的外洋からのうねりの影響を受けづらい海域の場合はニューラルネットワークモデルとガウス回帰過程モデルの精度が数値シミュレーションモデルより高い傾向となった.ニューラルネットワークモデルとガウス回帰過程モデルは学習データ量によって精度の優劣が変化した.学習データ量が少ない場合(半年未満程度),ガウス過程回帰モデルの方が精度が高い.学習量が増えるにつれてニューラルネットワークモデルの精度が大幅に高くなる一方,ガウス過程回帰モデルは僅かに改善する程度であった.学習データ量が1年間程度まで多くなるとニューラルネットワークモデルの精度はガウス過程回帰モデルと同等もしくは僅かに高い精度にまで上昇した.学習速度の比較についても学習データ量に依存し,学習量が少ない場合はガウス過程回帰モデルの学習がニューラルネットワークモデルに比べて速く,学習量が多くなってくるとニューラルネットワークモデルの方が速くなる傾向があった.また,ニューラルネットワークは学習データの選び方により推定値が大きく変化するが,ガウス過程回帰モデルは学習データの選び方によらず推定値が比較的安定することもわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた検討について十分に実施することができた.次年度に実施する計画であったモデルのメリット・デメリットの把握もここまでの検討の中で一部明らかとなったことは僅かに計画以上に進展していると言える.また,ここまでの成果をまとめて海外ジャーナルへの投稿の準備も進めており,現在最終の英文校正中である.以上を総合的に判断し,本研究はおおむね順調に進展しているとした.
|
今後の研究の推進方策 |
新たな波浪予測手法の基礎として本研究で導入したガウス過程回帰モデルであるが,従来の予測モデル(数値シミュレーションモデルやニューラルネットワークモデル)と比較して有利な点もあれば不利な点もあることがここまでの検討で明らかとなった.今後は当初の計画通りに,ガウス過程回帰モデル単体での予測精度の向上や予測速度の改善を行っていくが,加えて複数の予測モデルを組み合わせることで単体のモデルよりも精度が向上する可能性にも着目してみたい.具体的には,複数のモデルから得られた推定値を場合によって重みを変え(すなわちケースによってより信頼できそうな方に大きな重みを置いて)複数の推定値を足し合わせることで各モデル単体の推定値を超える精度の結果を導出することを検討している.
|