日本の道路交通法によると、横断歩道では歩行者優先であり、左折車と横断歩道上の歩行者の軌跡が交錯する場合、歩行者が交錯点を通過するまでの間、運転者には横断歩道手前での減速義務や停止義務がある。しかしながら、現状では左折車は必ずしもこれを遵守しておらず、歩行者の前を通過する場面も多々存在する。特に、横断歩道長の長い場合、運転手はまだ歩車間の距離が十分にあると判断したり、長い待ち時間などにより歩行者が横断歩道に入っているにもかかわらず横断歩道を通過することも多いと考えられる。一方海外では、歩行者の安全性を考慮し歩車分離信号制御もよく使われている。 そこで本研究では、異なる信号現示長、横断歩道長及び歩行者交通量の信号交差点における利用者挙動観測調査を行い、交差点の幾何構造や信号現示や交通状況などに応じて左折車が歩行者優先の法令への遵守状況を分析し、横断歩行者の数、横断歩道の長さ、信号の経過時間などの要素を考慮した遵守挙動を再現可能な左折車両の譲り挙動モデルを構築した。そして車両の譲り挙動モデルを基づいて、モンテカルロシミュレーションを行い、左折車線の交通容量や遅れなどの円滑性指標を定量的に評価できるようになり、横断歩道の幾何構造や利用者交通量等が交差点の円滑性に与える影響を明らかにした。またその結果を国内外のマニュアルにある既存の手法との比較分析と観察データにより、本研究で提案したモデルの有効性が確認された。さらに左折車の法令遵守率の向上と円滑性の両立に寄与できるような信号交差点の幾何構造や交通条件に応じた合理的な信号現示方式の選定方法を提案した。
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