研究課題/領域番号 |
22K14347
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 助教 (90838864)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 免許返納 / 高齢者 / 健康 |
研究実績の概要 |
本研究は,都市・交通環境を考慮した運転免許返納の最適な時期を示す指針の提案を目的とする.どのような都市・交通環境にある高齢者が,どの段階で免許を返納した際に,免許返納後の新しい交通手段への転換ができるのか,外出などの活動頻度にはどのような影響が出るのか,返納前後で健康状態は変化するのか,などについて明らかにする.免許返納の時期や都市・交通環境による健康状態や活動への影響を示すために,同一人物に対する複数年の追跡調査(縦断的な調査)を行う. 本年度は,免許返納した高齢者と免許を保有している高齢者の健康状況や活動状況,免許返納の時期によるそれらへの影響を明らかとするために,アンケート調査を行った.この結果により,1年目の横断的な分析に加え,2年目以降の継続モニターの抽出を行った.免許返納した高齢者781人、免許を保有している高齢者103人のアンケートの回収を行った.また,2年目以降の継続モニターの募集もできた. アンケート調査の結果から,免許返納した高齢者について,免許返納の時期や都市・交通環境と健康状態との構造を示すために,共分散構造分析を行った.その結果,都市・交通環境に不満がある人がフレイル状態である可能性が高いこと,都市交通環境への主観的不満と主観的不満が相互関係であること,客観的都市交通環境(スーパーマーケットや病院,バス停の利用しやすさ)の悪い人が免許返納の時期が遅いことなどを示している.また,免許返納の時期が早い人ほどフレイル状態になっていないことや,免許返納の時期が早い人ほど活動能力指標が高いことなども示している.このことにより,ある程度都市・交通環境が整っている人は早めに運転免許の返納を行うことで,新しい生活や交通に慣れ,健康状態も確保できる可能性が示唆された. これらの結果について,2年目以降の継続調査から,より詳しい影響の把握を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,運転免許返納者からのアンケート回収数を760人と予定していたが,それを上回る781人からの回収が行えた.さらに,追加で実施した免許保有者に対するアンケート調査も実施できた.また,これらの結果より,都市・交通環境,免許返納時期,健康状態の関係について一時断面的に示すことができた. 一方で,当初継続調査の同意者について380人を予定していたが,269人しか集まらなかった.ただし,これら269人の高齢者からは4年間の調査に同意していただいている.継続調査の協力者は毎年大幅に減少する予測していたが,最終的な4年間の継続予定者数66人は上回ることが考えられる. 以上の理由より,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
継続調査に同意していただいた高齢者に対し,健康状態や活動状況についてのアンケート調査を行う.これらの結果を1年目のアンケート調査と比較し変化を把握することで,免許返納時期や都市・交通環境と,健康について因果関係を示す. このことにより,都市・交通環境を考慮した運転免許返納の最適な時期を示す指針の提案を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査票の回収について料金受取人払いにて実施している.また,継続調査の同意者にはQUOカードの謝礼を行っている.アンケート票の回収状況の予測は難しく,継続調査の同意者数によって支出が増えることから,ある程度余裕のある運用を行ったため.
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