研究課題/領域番号 |
22K14350
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
原 宏江 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (70823524)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 合成ホルモン / 水晶振動子マイクロバランス / トキシコゲノミクス / 下水由来溶存有機物 |
研究実績の概要 |
本年度は,合成ホルモン物質について,①QCMを用いた処理水マトリクス-微量汚染物質間の吸着特性の分析と,②ヒト細胞(HepG2)を用いた遺伝子発現解析により,処理水マトリクス-微量汚染物質の相互作用の検討を行った.下水処理施設において処理水を採取し,イオン交換樹脂を用いて疎水性有機物を酸性,塩基性,中性の3つに分画した.これら3画分と17α-エチニルエストラジオール(EE2),17β-エストラジオール(E2),エストロン(E1)をそれぞれ混合し,細胞生存率及び毒性マーカー遺伝子の発現量を測定した.一方で,EE2及びE2については,水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて各画分への吸着量を測定した.細胞毒性試験の結果から,いずれの化学物質と画分の組み合わせにおいても,細胞生存率における複合作用は相加的であることがわかった.一方,マーカー遺伝子の発現変動によれば,混合の有無を問わず,EE2は細胞増殖に関わる遺伝子群に,E2は生体外異物に応答する遺伝子群に,それぞれ影響を与えることがわかった.混合試料において,マーカー遺伝子の発現変動の規模とEE2及びE2の3画分への吸着量の間には強い負の相関があったことから,下水由来の疎水性有機物がE2及びEE2の生体影響を緩和する能力を有する可能性が示唆された.また,包括的な水質の変化を簡便・定量的に比較する必要が生じたため,日本各地より収集した様々な飲用水の網羅的な蛍光分析データに対し機械学習に基づく異常検知手法を適用し,蛍光特性に基づき飲用水水質をモデル化するとともに,飲用水と高度下水処理水の総合的な水質の類似性を定量的に比較する手法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一部の比較的親水性の高い対象物質についてQCMセンサーへの固定がまだ完了できていないため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,残りの対象物質(解熱鎮痛薬,抗菌薬,向精神薬,産業化学物質)について,合成ホルモン物質と同様に,①QCMを用いいた処理水マトリクス-微量汚染物質間の吸着特性の分析と,②ヒト細胞(HepG2)を用いた遺伝子発現解析により,処理水マトリクス-微量汚染物質の相互作用の検討を行い,処理水マトリクスー微量汚染物質の相互作用を物理化学的な挙動と細胞影響の双方の点においてより体系的に明らかにする.また,機械学習を用いた包括的な水質の比較手法の開発においては,高分解能質量分析データを用いた検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
QCMセンサーへの固定方法が確立できていない物質があり,一部消耗品の購入を次年度に見送ったため次年度使用額が生じた.次年度に当該消耗品を購入する計画である.
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