研究課題/領域番号 |
22K14363
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鍋島 国彦 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (80843622)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | システム同定 / 剛性劣化 / 非線形 / 実大振動台実験 |
研究実績の概要 |
大変形領域を考慮した非線形履歴モデルの同定は,既存建物の耐震安全性を評価する上で極めて重要な意義を有する.既往研究で対象とされてきた履歴モデルはバイリニア型モデルやBouc-Wenモデルなど限定的であり,剛性・耐力劣化などの劣化特性が考慮されていない.本研究課題では,劣化特性を考慮した上で建物の非線形振動モデルを同定するとともに,同定モデルに基づく耐震安全性評価法の構築を目的としている. 先行研究にて非線形領域での同定可能性を見出したものの,検討実施例が限定的であること,同定法に初期値依存性があること,などの課題が存在していた.2022年度では検討例の拡充に向けて,E-ディフェンスで実施された実大振動台実験を対象に,剛性劣化型復元力特性(修正武田モデル)を有する多質点系せん断型モデルの同定を実施し,基礎部のロッキング動などが同定精度に及ぼす影響について検討した.ロッキング動に伴って,見かけの建物応答が助長/抑制されるため,履歴ループの膨らみに大きな差異が生じ得ることを確認した.同定精度への影響は,特に履歴減衰や内部粘性減衰を特徴づけるパラメータで顕著なことを確認するとともに,精度を向上させるためには基礎部のロッキングに伴う応答(剛体回転に伴う並進成分)を同定時に考慮する必要があることを示した.また,同定法の信頼性を確認する目的で,モード解析型多入力多出力ARXモデルを併用して,線形応答範囲での比較検討も実施した.この比較により,同定結果(線形域)の妥当性を確認した.2023年度以降も引き続いて同定実施例(非線形域)の拡充やその精度向上に向けた検討を行う. 上記と並行し,同定法に内在する初期値依存性への対応について検討を実施しているが,研究成果の取りまとめにまでは至っていない.2023年度以降も引き続いて検討を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度では,展開した同定法に内在する初期値依存性の問題について主に取り組む予定であったが,大学任期の都合で異動活動をしていたため,研究結果の十分な吟味や取りまとめが滞ってしまっていた.そのため,成果発表が遅れていた.この意味で「やや遅れている」と評価する.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度では,前年度で取り組めなかった「同定手法の初期値依存性を緩和させるための方策」について検討し,同定精度の向上を図る.検討には数値解析データや振動台実験データを用いる.2024年度では,同定された振動モデルの精度を検証するとともに,各応答クライテリアへの余裕度評価へと発展させ,建物の残余耐震性能評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
大学任期の都合で異動活動に専念していたため,研究結果の十分な吟味や取りまとめが滞っていた.そのため,2022年度で購入予定であった高性能デスクトップPCの構成について十分な検討が出来ず,やむなく次年度に回すこととした.2023年度では,計画通り高性能PCを購入する予定である.また,同年度では,国際査読論文に投稿する予定であり,オープンアクセス料も含めた投稿料に助成金を執行する予定である.その他,学会・シンポジウムへの参加費,旅費,研究資料・消耗品(記録媒体など)の購入,といった目的で予算執行する予定である.
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