研究課題/領域番号 |
22K14367
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
涌井 将貴 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (40778205)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 積雪荷重 / 構造ヘルスモニタリング / IoT |
研究実績の概要 |
急な大雪や積雪後の降雨により、屋根に想定以上の荷重が作用した結果、建物の倒壊や屋根の崩落といった被害事例が毎年のように報告されている。また、全国で発生した雪による死亡者の多くは、雪下ろしなどの除雪作業中の事故を原因としている。こうした建物の損傷被害や死亡事故は、見かけの積雪深では屋根に作用する積雪荷重を定量的に評価することが困難であることに起因している。そこで本研究では、建築物を常時モニタリングし、屋根雪荷重をリアルタイムに推定することで、適切な雪下ろしの実施時期を判断可能となるシステムを構築することを目的とする。 過去の研究において、屋根雪荷重計測を目的とした観測用建物モデルを開発し、過去3シーズンに渡って計測を行ってきた。この観測用建物モデルは実建物の1/3程度のスケールで製作された木造建物であり、荷重計や加速度計などを設置し、様々な計測が行えれるようになっている。申請者が既往研究で提案した加速度計測による屋根雪荷重の推定手法では、屋根雪荷重によって建物の水平剛性が変化しないと仮定している。しかし過去の計測結果から、屋根上に作用する荷重が増加すると、推定値が過小評価される傾向にあることがわかっている。そこで今年度は、申請者がこれまで提案してきた加速度計測による屋根雪荷重推定手法を改善するため、観測用建物モデルを用いた土のう実験を行った。実験結果から建物の屋根上に作用する荷重が増加すると、建物の水平剛性が増加する傾向にあることを明らかにした。この結果を基に、水平剛性の変化を考慮した屋根雪荷重推定手法を提案し、推定精度が向上することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定していた過去の計測データの分析だけでなく、次年度に予定した土のう実験を前倒しで実施した。また、今年度新たに木造2階建ての住宅4棟、木造建物1棟の計5棟に計測システムを設置し、冬期の加速度、温湿度の計測を行った。 観測用建物モデルを対象とした昨冬の計測データを分析し、屋根上荷重が水平剛性の変化に与える影響をを検証するための土のう実験を行った。冬期中に作用した最大荷重と同程度の土のうを屋根上に載荷し、常時微動計測、衝撃加振計測、および水平加力実験を行った。常時微動計測、衝撃加振計測を行った結果、建物に衝撃を与えることで常時微動時と比べてスペクトルにおける卓越振動数が読みとりやすくなることを確認した。水平加力実験の結果からこれまで課題となっていた屋根上荷重作用時の水平剛性の変化を算出することができた。 また、新たに設置した実建物も含め今冬の計測は大きな問題なく完了できた。加速度計測により得られた建物の固有振動数の変化と地上積雪深の増減に相関があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に実施予定だった土のう実験を前倒しで行った。結果として当初予定されていた水平剛性の変化を観測することができた。しかし、水平加力時における治具などに問題があったため、加力方向に対して均等に力が作用していない可能性がある。そこで次年度においては、今年度の土のう実験結果を精査し、加力方法などを改善した水平加力実験を実施する予定である。また、衝撃加振においては衝撃を与える方向を水平1方向に限定していたため、水平2方向あるいは水平2方向+鉛直方向の計3方向にも衝撃を与えるなどより多くの条件での計測を行う。また実建物を対象とした今冬の計測データについて分析を進め、次年度の冬期計測に向けた改善案の検証を行う。さらにより多くの実建物の計測が可能となるよう準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、学会がオンライン参加となったため、旅費が不要となる場合があったことなどもあり次年度使用額が生じた。翌年度は学会が対面開催となる予定であるため、その旅費などに充当する予定である。
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