研究課題/領域番号 |
22K14374
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鵜飼 真成 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (40896164)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒューマンファクター / 快適性 / 受容性 / パーソナル空調 / 積極的快適性 / プレザントネス |
研究実績の概要 |
パーソナル空調やクールスポット、等、ヒューマンファクターを活用したシステムの評価法は確立されていなく、その快適性は執務者の満足度から定性的に評価されているのが現状である。したがって、身体近傍から都市環境に至る各レイヤーに相応の環境調整機能を備えるヒューマンファクターデザインは省エネ性と快適性の両立が期待される次世代の考え方であるが、各レイヤーに要求される温熱環境を現行の快適指標を用いて推定することが困難であるため、実際の建物への導入はほとんど進んでいない。そこで、本研究ではヒューマンファクターを活用したシステムの快適性を客観的に評価可能であり、また建物設計時や運用時に各空間に求められる温熱環境やその効能を定量的に把握することができるモデルの構築を目的とする。そのためには、人間を静的な存在として捉え、さらに居住空間の熱的な特性を平均値として便宜的に仮定する従来の姿勢からの脱却が求められる。 本年度は、昨年度に開発した執務者のリアルタイムの心理量と生理量を測定できるデバイスを用いた実測を行った。実際のオフィスにおけるプレザントネスの発生状況の把握、およびプレザントネスが1日を通しての温熱環境評価に与える影響を調査することを目的とし、均一な環境を目指した従来型オフィスと環境選択性を備えた次世代型オフィスを対象に実測を行った。 気持ち良い申告に関しては、受熱状態で放熱側へと変動している時、または放熱状態で受熱側へと変動している時に多く発生する傾向がみられた。また、不快申告の多くは、申告以前に人体熱負荷が受熱側へと変動したことが原因であった。環境選択性を備えた次世代型オフィスでは、瞬間的な不快が発生したとしても、執務者自身の環境調整行動により不快を脱却し、プレザントネスを体験することで、温熱環境に対する評価が向上する環境を実現可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はヒューマンファクターデザインが施されている実際のオフィスにおいて、執務者のリアルタイムの生理量と心理量を調査することができた。また、人体熱モデルJOS-3(Joint System Thermoreguration-model)との連携を図ることで、詳細なプレザントネスの発生状況の把握、およびプレザントネスが1日を通しての温熱環境評価に与える影響を生理的な側面から評価することができた。 2023年度の計画通り、JOS-3との連携を完了したため、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの研究で、パーソナル空調やクールスポットなどの快適性を単体で評価するモデルについてはある程度確立できた。一方で、人間を動的な存在として扱うと、街区における涼みどころから建物エントランスのクールスポットを経て、執務室に入りパーソナル空調を使用するといった工程を評価する必要がある。最終年度あたる本年度においては、2023年度に実測したデータの分析をさらに深め、環境温度と要求温度の乖離に対してどの程度まで在室者がその環境を受容できるかという定義づけを行う。JOS-3との連携をさらに深めることで、本研究の最終目標であるヒューマンファクターを考慮したシステム単体の評価、及び複数の組み合わせを複合的に評価することが可能なモデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度で実施出来なかった研究計画上必要な実測を2024年度に行うため。
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