研究課題/領域番号 |
22K14379
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上野 貴広 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (80881804)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 離島 / 青ヶ島 / 電力需要 / 太陽光発電 / 電力ネットワーク / 脱炭素 / 分散型電源 |
研究実績の概要 |
本研究開発課題は、住宅街区のオールタイムゼロ・エネルギー・コミュニティ(ZEC)化計画を導出できるエネルギーネットワークモデルの構築を目標とする。物理モデルを用いて街区における住宅数百戸の電力とガスの消費や各設備の運転を5分間隔で再現し、実制限を組み込んだ配電網で街区内を繋いだネットワークモデルを構築する。構築したモデルを用いて、特徴の異なる複数の実住宅街区を対象に、2030年のオールタイムZECへの街区ロードマップを導出する。住宅の省エネ性能向上や空地への大規模供給設備の導入といった施策により余剰発電を確保し、街区規模のマネジメント技術を用いて配電網の制限下でエネルギーを最大限有効活用することで、街区として住宅個々のZEH化施策を超える省エネ効果を生み出しながら、オールタイムZECを実現する最適な施策セットを省エネ性と経済性の観点から導き出し、街区ロードマップとして示す。 研究初年度の実績としては、ネットワークモデル構築を進めた。将来的には複数の実住宅街区を研究対象街区に選定するが、まず離島かつ国内最小人口自治体の東京都青ヶ島村のモデルを構築した。 まず対象離島の住宅の建て方や住民の生活について把握するために、現地調査を行った。住宅の建て方や構造、各家庭における自動車や空調設備の保有台数、使用ガスの種類、街区内の配電網を目視で確認した。調査データとGISデータを基に各家庭のエネルギー需要を推定し、推定結果を住宅の位置や配電網を考慮して構築したネットワークモデルに組み込んだ。さらに配電線電圧が法定値の範囲内に収まるようにしながら、PV の導入やEVや家庭用蓄電池といった蓄電設備の導入の効果を評価し、電圧上昇によるPVの出力抑制の発生を防ぎながら、離島地域の住宅街区をゼロエネルギー化していく方法を検討した。 現在、上記の作業結果を取りまとめ、学術雑誌への論文投稿を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実住宅街区を対象にネットワークモデルを構築し、モデルを用いてPVやEV、家庭用蓄電池といった設備の導入効果を評価し、電圧上昇によるPVの出力抑制発生を防ぎながら、離島地域の住宅街区をゼロエネルギー化していく方法を検討できたため、おおむね順調に研究が進展していると判断した。 研究初年度の実績としては、ネットワークモデル構築を進めた。将来的には全国都市交通特性調査に基づく住宅地分類と気候区分の組み合わせから実験計画法を用いて20程度の実住宅街区を研究対象街区に選定するが、CO2排出量の多いディーゼル発電による独立電力系統であり、発電の燃料は本土から輸送しているため、発電にかかるコスト増加や有事の際に燃料供給が滞るリスクといった問題を抱えており、さらに再エネ電源に転換する場合の不安定な出力を補う需給調整力を島外に求めることが難しい離島かつ国内最小人口自治体の東京都青ヶ島村を対象に、実住宅街区データを用いてモデル構築を進めている。 まず対象離島の住宅の建て方や住民の生活について把握するために、現地を訪問して調査を行った。住宅の建て方や構造、各家庭における自動車や空調設備の保有台数、使用しているガスの種類、街区内の実際の配電網を目視で確認した。調査データとGISデータを基に各家庭のエネルギー需要を推定し、推定結果を住宅の位置や配電網を考慮して構築したネットワークモデルに組み込んだ。 さらに青ヶ島村における太陽光発電を導入した場合の発電量を推計した。配電線電圧が法定値の範囲内に収まるようにしながら、PV の導入やEVや家庭用蓄電池といった蓄電設備の導入の効果を評価し、電圧上昇によるPVの出力抑制の発生を防ぎながら、離島地域の住宅街区をゼロエネルギー化していく方法を検討した。 現在、上記の作業結果を取りまとめ、学術雑誌への論文投稿を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず構築したネットワークモデルにいくつかの改良を加えることで完成させ、今後他地域におけるネットワークモデル構築のベースとする。 次に、気候区分といった地域特性が青ヶ島村と異なる住宅街区を研究対象街区に選定し、フィールド調査を計画する。フィールド調査ではネットワークモデル構築に必要な街区内の住宅や配電網の情報を取得し、モデルに組み込む。 さらに、世帯や住宅の配置と年間増減数について地理情報データと統計資料を基にまとめ、2030年の街区構成を各街区のシナリオとして推定する。住宅の延床面積や部屋数、築年数などは統計資料に基づく分布から、居住世帯構成や所持家電設備は先行研究や統計資料から作成した住宅規模別の世帯分布や家電設備の所持分布から割り当てていく。推定したシナリオに基づきモデルへの情報入力やモデルの追加、削除等を行うことで各街区の2030年におけるネットワークモデルを作成する。なお各街区の系統電力における電源構成は、管轄電力系統が公表している2030年の想定を用いる。 最後に住宅への供給設備や蓄エネ設備の導入・断熱強化・給湯設備の高効率化、空地へのメガソーラー・大規模蓄電池・水素貯留施設の建設、電力融通・V2G・P2Gといった街区のエネルギーマネジメントなどの施策を組み合わせ、街区の2030年オールタイムZECを達成する最適な施策セットを導き出し、街区ロードマップとして示す。オールタイムZEC達成を前提として、省エネ性として街区外への電力供給によるCO2削減量を、経済性として導入コストを評価項目とし、省エネ性と経済性2つの評価軸による多目的最適化とする。施策セットは数万通りを超えるため、多目的最適化を解く重み係数法やε-制約法といったスカラー化手法の中から計算速度や精度の観点から適切なものを取り入れる。
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