研究実績の概要 |
本研究は,日本の港湾都市における臨海部の都市計画が抱える課題に対して,歴史的な経緯の研究と現況の課題研究を通じて,その原因を複層的に明らかにしていくものである。2023年度は主に,臨港地区制度の歴史的な経緯について,1950年の港湾法制定前後から1960年代に至るまでの期間,つまり臨港地区制度の黎明期について,各種文献調査を実施した。その成果を下記の論文・研究発表として実施した。「旧都市計画法下の臨港地区制度の成立と普及の過程」,大森 文彦,中島 直人,都市計画論文集 59(1),pp.110-117,2024年4月25日 「関東大震災後の東京の臨海部整備と都市計画の対応に関する研究」,大森 文彦,土木史研究講演集43(第43回土木学会土木史研究発表会),2023年6月 また,同研究に付随して,戦時中の工業都市建設に関する記録にも触れる機会があったことから,その成果を下記の学会発表として実施した。「福岡県春日原における戦時下の新興工業都市計画および住宅営団による市街地形成について」,大森文彦, 中野茂夫, 齋藤駿介,日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),2023年9月,pp.1087-1088,2023年9月 これら一連の研究を通じて,1950年代臨港地区制度の活用が低調であったものの,1960年代から各種の行政勧告などにより,1964年前後に全国のほぼすべての重要港湾で臨港地区が指定されていた状況が明らかとなった。また,東京港などの一部の港湾では臨港地区とはことなる「港湾地区」なる制度が並行して運用されていた時期があったことも明らかとなった。
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