研究課題/領域番号 |
22K14393
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
大塚 芳嵩 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 助教 (70784867)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 都市緑地 / 健康増進 / 人工知能 / パネルデータ分析 / 疫学研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、都市部における人間・社会・環境の相互作用に関する各種のデータをパネルデータとして取得し、人工知能を用いた時系列分析によって都市緑地の健康増進効果の発現プロセスを明らかすることを目的とした疫学研究に相当する。本研究は、申請者が独自に調査していた過去2時点分(2021年3月及び2022年3月)のパネルデータに関する追跡研究と位置づけられる。本研究が達成された暁には、データセットに含まれる多要因間の確率的因果関係が構造モデルとして図示され、都市緑地の健康増進効果に関するメカニズムとその効果を最大化する条件が明らかになる。 本研究の初年度においては、主として、①本研究の採択に伴う調査内容の修正、②第3時点目の調査に関する準備、申請、実施、③本研究に関連する各種の学会発表等を行った。 上記①と②に関しては、申請者が独自に調査した第1-2時点目の結果から明らかになった傾向をもとに、第3時点目(初年度)の調査の内容ついて計画し、2023年3月末(第1-2時点目の調査と同時期)に調査を実施した。この結果、第3時点目の調査(追跡研究)としては、約2000名弱から回答を得ることができた。今後については、第3時点目の調査についてデータ・クリーニングと初期解析を行い、第1-2時点のデータと連結して3時点のパネルデータ化を行い、時系列分析を実施する。また、上記③に関しては、本研究が採用している人工知能を用いた時系列パネルデータ分析に関する方法論について、国内外の緑地環境学、医学、混合研究法に関する学会において学会発表を複数回行い、機械学習やベイズ統計学を用いた方法論が本研究テーマである緑地と健康に関する研究分野において有望であることを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画はほぼ全て実施できたため、概ね順調に進展していると評価できる。 研究実績の概要における①と②については、本研究が開始される以前から実施していた第1-2時点目の調査実施期時期にあわせるため、初年度末の3月に第3時点目の調査が実施となったが、問題なく当初の予定通りに進捗している。③についても、国内外における複数回の学会発表、招待講演等の機会を頂き、順調に進捗している。また、本研究で採用している人工知能によるパネルデータ分析の方法論について、雛形となる論文等も採択された。このため、本研究の初年度に相当する現時点では、概ね研究計画全体としては順調に推移していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2023年度)の研究計画においては、以下の計画のもとに研究を行う。 ①申請当初の研究計画に即して同じく第4時点目の調査を行い、追跡調査を継続する。これにより、人工知能による時系列分析において必須となるパネルデータの基盤整備を行う。ただし、本研究は当初3年間の研究期間において四季の変化による影響を調査するため計5時点(回)の調査を実施する予定であったが、今回の科研費採択に伴い、調査回数、調査時期、調査規模について適宜変更することとした。 ②申請者が本研究計画の申請以前から実施していた第1-2時点データと本研究計画による取得した第3時点のデータを連結して人工知能による時系列分析を行う。この際に、既に実施済みの予備調査における分析結果や第1時点目の時系列を含まない横断データにおける分析結果等を踏まえて、モデルの改良を行い、それらの分析を来年度(2023年度)に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、以下の3点の理由から初年度において次年度の持ち越しが生じた。 ①本研究の申請当初は3カ年の研究計画期間内で季節変化による影響を捉えるため、計5回の追跡調査を実施する予定であったが、採択時に得られた予算を考慮して研究計画期間内における調査回数、調査規模の見直しを図る必要があった。②本研究の研究デザインがパネルデータ分析(同一対象者の追跡研究)である都合上、毎回の調査において対象者の脱落(対象地からの引っ越しや調査への不参加など)が生じるため、人工知能による分析の精度を落とさないためには、新規参加の獲得も必要となり、1回あたりの調査規模が当初予定よりも大きくせざるを得ない状況となった。③初年度に関しては、上記の事情に加えて、別途本研究に使用できる研究費が得られたが、その予算は2022年度までの予算であるため、そちらの費用を利用した調査を優先した。 以上の理由から、繰り越し可能かつ脱落した対象者の補填がより必要となる翌年度に科研費予算を繰り越した。
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備考 |
上記はNTTデータ数理システムアカデミックコンファレンスFY2022における発表(招待付き)となる。
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