研究実績の概要 |
外部空間において、利用者からどれだけ緑が見えているのかは、快適性の向上の観点から計画上の重要なテーマである。近年では都市空間の緑視率(=視界に占める緑の割合)の目標値が定められる例もあり、緑視率の確保を加味した植栽計画の立案が求められていると言える。そこで本研究は、与えられた敷地に対して配置する樹木の形状と本数を決定した場合の緑視率の期待値をモンテカルロシミュレーションによって導出し、その数理的関係を体系的に数式化することを目的とする。 2022年度は、マルチGPU演算の実装に取り組み、緑視率計算のさらなる高速化を達成した。これにより膨大なパターンのシミュレーションを実行可能となった。また、開発した計算手法を用いて、緑視率期待値計算のモンテカルロシミュレーションを進めた。具体的には、街区公園の規模を想定した50m四方の仮想敷地において、12種類の樹木形状と、5,10,15,20,25,30,35,40%の8段階の緑被率を条件として設定し、これに応じた本数分の樹木を敷地にランダムに樹木を配置した場合の緑視率期待値の計算を行った。確率的に収束させるため、樹木形状と想定緑被率の各組み合わせに対してそれぞれ300通りのランダム樹木配置モデルを生成することとした。即ち、樹種12種類×想定緑視率8段階×各300ランダムモデル=計28,800モデル緑視率の計算を実行し、完了している。現在、これまでに得られた緑視率期待値のモンテカルロシミュレーションの計算結果を精査している。具体的には、結果の図化や推定式の作成に着手しているほか、シミュレーションの精度検証などに取り組んでいる。
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