研究課題/領域番号 |
22K14419
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
猪熊 建登 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00898926)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ガスタービン翼 / 伝熱促進 / 衝撃波 / 乱流 / フィルム冷却 / 内部冷却 |
研究実績の概要 |
2022年度は、本研究の基盤装置である無隔膜衝撃波管を作製・性能評価し、これを現有の内部冷却流路装置(矩形断面をもつ流路)に組み込むことで、内部冷却/衝撃波干渉系を実験室で実現した。翼後縁部フィルム冷却に適用前に、衝撃波と干渉したチャネル流の基本的な熱伝達性能を、より簡単な系で調査することを目的とした。無隔膜衝撃波管は、複数の電磁弁からなる駆動弁を有し、駆動部に電空レギュレータを設置して駆動部圧力を一定に自動制御できるようにした。この状態で駆動弁にワンボードマイコンからのON/OFF信号を入れることで、駆動弁を自動開閉できるようにし、衝撃波の繰り返し放出(2 Hz程度)を可能にした。内部冷却流路内に熱線流速計を設置して主流方向流速を計測したところ、衝撃波付与によって乱流強度(主流方向流速rms値と主流方向平均流速の比)が5.3%から8.9%まで増加し、衝撃波による乱流促進効果を得た。内部冷却流路内にティアドロップ型のディンプルを敷設した伝熱面を取り付け、衝撃波を繰り返し付与した際の伝熱性能を、過渡応答法による伝熱実験により調査した。ティアドロップディンプルの傾斜角度(0、30、60 deg)と配列(in-line/staggered)を変化させて上記実験を行った結果、60deg傾斜・in-line配列のとき最もヌセルト数が高く、伝熱面平均ヌセルト数が衝撃波付与なしに比べて14%向上した。差圧計を用いて伝熱面上流と下流の圧力損失を計測して摩擦係数を算出したところ、衝撃波付与なしに比べて6.7%増加した。圧力損失を考慮した熱伝達性能の指標である伝熱性能係数を算出したところ、衝撃波付与なしに比べて12%増加し、衝撃波によるチャネル流の伝熱促進に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基盤となる無隔膜衝撃波管の作製・性能評価を完了し、内部冷却流路装置に組み込んで内部冷却流/衝撃波干渉の伝熱性能計測を行うことができた。伝熱面であるティアドロップディンプル面のディンプル傾斜角度・配列を変化させて伝熱実験を行い、衝撃波を付与した際の熱伝達率・摩擦係数に関する知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、現有の翼後縁部フィルム冷却流路装置に無隔膜衝撃波を組み込んで伝熱実験を行う予定である。翼後縁部フィルム冷却流路装置の冷却流路に衝撃波管の開放端を接続し、冷却流に衝撃波を付与できるようにする。ティアドロップディンプルを敷設したカットバック面を設置し、ディンプル傾斜角度・配列を様々に変化させて過渡応答法による伝熱実験を行う。衝撃波付与によるティアドロップディンプル面の熱伝達性能(ヌセルト数)の変化について、内部冷却流路での実験で得た結果と比較・議論する。また、フィルム冷却効率や、正味熱流束低減率などの指標を用い、熱遮蔽性能や、熱遮蔽・熱伝達総合性能の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
速度計測用の熱線プローブを新たに購入するために計上していたが、現有の故障したプローブを修理して再度使用可能となったため購入の必要がなくなり、次年度使用額が生じた。次年度以降、熱線流速計修理に必要なタングステン線購入に使用予定である。
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