研究課題/領域番号 |
22K14434
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
奥原 真哉 松江工業高等専門学校, 実践教育支援センター, 技術専門職員 (90835779)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 流体ダイオード / 波力発電 / ツイン衝動型タービン / 風洞試験 / CFD |
研究実績の概要 |
海洋エネルギー利用技術の一つである振動水柱型波力発電で使用する空気タービンとして,一方向流れに使用する衝動型タービン2台を用いて往復気流を整流する波力発電用ツイン衝動型タービンが提案されている.本研究では,この波力発電用ツイン衝動型タービンに使用する流体ダイオードについて,定常流を対象としたCFD解析と風洞試験の実施により整流効果の高い流体ダイオード形状を提案し,波力発電用ツイン衝動型タービンの往復気流における平均効率の向上を目的として研究を実施している. 本研究実施期間の2年目となる令和5年度は,従来の研究により好適であった流体ダイオードの形状を基準として流体ダイオードの要素の一つである鈍頭物体にバイパスを設けることにより,正方向流れにおける流体ダイオード前後の圧力差低減を試み,その有効性を風洞試験とCFD解析によって調査した.まず,ケーシング内径Dに対して,バイパス径dを変化させて実験を行った.その結果,流体ダイオードの鈍頭物体にバイパスを設けることにより,整流効果が向上し,その好適値は本研究の範囲では,d/D =0.04であることがわかった.さらに,その結果を用いて波力発電用ツイン衝動型タービンの性能に及ぼす流体ダイオードの影響を計算したところ,ツイン衝動型タービンにバイパスを有する流体ダイオードを設置することで逆方向タービンの流量が減少し,正方向タービンを通過する流量が増加した.このため,流体ダイオードへのバイパス設置は,ツイン衝動型タービンの整流効果改善に有効であると考えられる.また,バイパスをテーパ形状とし,その角度を変化させて実験を行った.その結果,流体ダイオードの鈍頭物体にテーパ状バイパスを設けることにより整流効果が向上することがわかった.本研究の範囲においてその好適値は,15°であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,従来の研究により好適であった流体ダイオードの形状を基準として流体ダイオードの要素の一つである鈍頭物体にバイパスを設け,3Dプリンタにより供試流体ダイオードを製作して風洞試験を行った.供試流体ダイオードは,バイパスを有する流体ダイオードとしてバイパス径dを変化させて3種類を製作し,テーパ状バイパスを有する流体ダイオードとしてテーパ角を変化させて3種類を製作した.これらの供試流体ダイオードによる実験値を比較し,好適な流体ダイオード形状を調査した.また,CFDによりバイパスの有無やバイパス径の違い,テーパ角の違いによる流体ダイオード内部の流動状態を解析し,整流効果に及ぼす影響を調査した。 当初の研究実施計画と前後するところはあるがおおむね計画通り進展している. このため,「おおむね順調に進展している.」の区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では整流効果の高い流体ダイオード形状を提案し,波力発電用ツイン衝動型タービンの往復気流における平均効率の向上を目的としている.この目的を達成するため,さらに研究実施計画の②~④のサイクルを増やし,好適な流体ダイオード形状を調査する. ②CFD解析による流体ダイオードの設計:従来の研究結果に基づき,CFD解析により種々の流体ダイオード周りの流動状態を予測することでツイン衝動型タービンに好適な流体ダイオード形状を調査し,項目③の風洞試験に使用する供試流体ダイオードを設計する.③風洞試験用流体ダイオードの製作:項目②の設計に基づき,3Dプリンタにより供試流体ダイオードを製作する.④流体ダイオードの風洞試験:項目③で製作した供試流体ダイオードの風洞試験を実施し,各ダイオードの正方向,逆方向の流れにおける差圧(流体ダイオード前後の圧力差)と流量の関係(差圧-流量曲線)と差圧比(=逆方向流れ時の差圧/正方向流れ時の差圧)を求める. また,風洞試験において流速や圧力差の測定精度を高めるため,風洞試験装置の一部を改良し,実験に用いる予定である. そして研究期間の最終年度にあたるため,成果発表と総括を行い,流体ダイオードの好適形状を提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の本報告にて記載したとおり,表面性状の良好な3Dプリンタは材料価格が高額であるため,流体ダイオードの製作数などにより予算に見合わないと判断した場合は,3Dプリンタ機種を変更し,供試流体ダイオードの製作を行う計画であった.2種類の3Dプリンタにより流体ダイオードを製作し,風洞試験とCFDを用いた流れ解析を行い,検討した結果,3Dプリンタ機種を変更しても支障が無いと判断したため,現在までの進捗状況に示したように供試流体ダイオード6種類を材料価格が安価である3Dプリンタを使用し,製作を行った.このため次年度使用額が生じた. 次年度使用額は,3Dプリンタ材料の購入にあて,供試流体ダイオードを製作することで,さらなる成果の創出を目指すとともに,成果発表のための学会参加登録費,学会参加旅費に使用する計画である.
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