研究課題/領域番号 |
22K14448
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
都丸 武宜 京都工芸繊維大学, その他部局等, 特任研究員 (90794149)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歩行者 / 自己組織化 / 運動多様性 / 同期現象 |
研究実績の概要 |
本研究では歩行者集団における歩行周期の自発的な同期現象に着目し、自己組織化への寄与を明らかにすることを目的としている。本年度は外的統制を伴う群集実験を実施し、その解析を行なった。具体的には、横断歩道等でみられる歩行者集団の双方向の流れ(対向流歩行)を再現した実験系において、一定周期の音を流し歩行者がそのリズムに合わせて歩行するという「テンポ条件」での歩行と、通常条件での歩行を実施し、歩行者の両足の運動と歩行軌跡を計測・解析し比較を行なった。足の運動解析からテンポ条件ではリズムに合わせて歩行しており、両足の動きが同期した運動をしているが、通常条件では同期した運動は偶然起こるレベルであった。また、対向流歩行では「レーン形成現象」と呼ばれる同方向に歩行する人々の間で自然といくつかの列が形成される現象が知られているが、歩行軌跡の結果から、外的統制がなされた集団において形成されたこの構造は、通常条件と比較すると形成される列の数が増える等の不安定な構造となることが明らかとなった。歩行者は1対1ですれ違うという単純なタスクにおいても、その場その場で協調的な振る舞いをみせ、相互作用において相手との柔軟な運動の調整を行なっている。本実験で示された介入による集団としての構造の不安定さは、外的に与えられた歩行のリズムに合わせた画一化された運動を行う集団となり、こうした協調的な振る舞い、対向者や同方向に歩行する周囲の歩行者との細やかな調整が困難になったためと考えられる。これらの結果から多様な運動可能性が担保されていることがレーン形成現象という自己組織化のメカニズムの基盤の一つであることが示唆された。これらの結果の一部をSI2022において発表し、優秀講演賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、外的制御を用いた実験条件は次年度に実施予定としていたが、本年度に実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
被験者に対する教示の仕方(音に意図的に合わせるか)や提示する音のBPMの変更等の新たな実験条件を設定して実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
歩行時の足の運動解析を加速度計のみで実施する変更に伴い、関連する物品の購入や人件費が不要となったため。これらはより詳細な歩行解析のために3次元歩行軌道を計測可能な歩行分析計の購入費とする。
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