本年度は、特徴抽出の応用による作業動作と姿勢安定性の関係の検討に取り組んだ。具体的に、前年度に測定した操作反力の突発的な外乱を伴う押し作業における実験データについて、①特徴抽出による姿勢不安定感に影響する関節の特定、②選択された特徴量による姿勢不安定性の判別、③作業区間別の動作特徴の抽出と外乱による影響の評価、④相関異常度の計算に基づく姿勢変化に与える影響の大きい関節の特定を行うために、特徴抽出手法の検討や姿勢安定性または突発的な外乱との関係を明らかにした。①および②では、Lasso回帰による特徴抽出によって押し姿勢の変化と関連する主要な特徴量を得ることを示し、それらの特徴量を用いたサポートベクタマシンによる姿勢不安定感の判別精度が、全ての特徴量を用いた場合と比較して大きく減少しないことを示した。また、③は単一の関節の変化のみでなく複数の関節の協調関係を考慮した特徴抽出を行うために、グラフィカルLassoと呼ばれる主要な関係のみを抽出する手法により、力発揮戦略の変化による作業姿勢変化を主要な関節の協調関係の変化により明らかにした。また、④では相関異常度を計算することで、外乱発生前と発生後の作業姿勢変化の比較を行い、足位置の違いや作業区間によって協調関係の変化に与える影響の大きい関節を明らかにした。 また、⑤危険事象の経験が作業姿勢変化に与える影響の評価を行うために、被験者実験を行い、作業姿勢や姿勢安定性、力の発揮戦略の関係について明らかにした。結果として、危険事象を初めて経験した条件では床反力作用点の変化量が増加し、危険事象経験後の操作力の変化速度が経験前と比較して減少する傾向にあり、危険事象の経験が姿勢動揺と力発揮戦略に影響を与えることを明らかにした。
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