研究課題
落雷は時として火災や電子機器などの故障を引き起こす脅威であり、落雷が生じる前にそれを検知する雷予知が可能となれば、事前対策などによって被害低減が期待される。しかし現段階では雷放電を引き起こすような雷雲中の強電場領域のリモートセンシング手法が確立しておらず、有効な雷予知の手段は存在しない。本課題では高エネルギー粒子、特に二次宇宙線のミューオンに着目し、地上からのリモートセンシングで雷雲内の強電場領域を探知し、雷予知への有効性を探る。2022年度はプラスチックシンチレータと半導体光センサーを利用したミューオン検出器を制作した。11月には1台を石川県金沢市に展開し、冬季雷における観測を実施した。観測運用は11月から翌3月まで継続し、またミューオンの観測のみならず地上電場やガンマ線の同時観測も実施した。3月に観測機器を撤収し、データの解析を進めている。これらミューオンの観測に加え、これまで石川県で観測されてきた放射線のデータを元に、雷雲中に強い電場が存在する場合の総観気象場について調査を行った。総観気象場は主に4つのパターン、寒気移流型、極低気圧型、小低気圧直撃型、寒冷前線通過型に分類され、特に寒気移流型と極低気圧型が地上で放射線が観測されやすい条件であることを明らかにした。また放射線が観測されなかった事例の解析も行い、主に気温場の観点から、地上で放射線が観測されやすい気象場・されにくい気象場を明らかにした。
3: やや遅れている
部材入手の遅れなどにより、当初想定していた夏季の観測はできなかったが、11月より石川県金沢市での冬季観測を実施することができた。3月に観測機器を撤収し、データ解析を進めている。2台目以降の検出器の製作も進めており、これらは2023年の夏の雷シーズンに向けて順次投入予定である。
2023年度は2台目・3台目の検出器を制作し、大阪周辺に設置して雷の観測を実施する予定である。また2022年11月から翌3月まで石川県金沢市で取得したデータの解析を進める。昨シーズンは例年と比べて雷が少なかったものの、12月に数回の雷雲通過があり、そのデータを中心に解析をすすめる。1台目の検出器は気象観測機器が整備されている茨城県つくば市の気象庁気象研究所に共同研究として設置しており、雷のみならず各種気象観測のデータと比較する予定である。
プラスチックシンチレータの追加購入を予定していたが、まとまった発注のほうが単価が安くなり、2023年の夏季観測の予定時期的に次年度購入でも間に合うため、次年度にまとめて発注することとした。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 10 ページ: -
10.1186/s40645-023-00538-2