研究課題/領域番号 |
22K14460
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
村田 一城 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (30827192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 海底地すべり / 海底ジオハザードマップ / 海洋再生可能エネルギー / 洋上風力発電 / 粒子法 |
研究実績の概要 |
令和4年度は,海底地盤を取り巻くリスクハザードの解釈を念頭に置いた日本沿岸域の基本的な海底ジオハザードマップ情報の整理とデータベース化を実施した.また,海洋エネルギー発電の中でも導入計画が活発な洋上風力発電を事例に取り,当該発電施設の全国の導入・計画海域および周辺海域の地盤情報と海底ジオハザードとの関連性について調査した.これにより,太平洋側の東海・東南海・南海域において海底地すべり・液状化流動リスクに関連する以下の情報を得た:①M8級の大規模地震想定海域,②広範囲の海底地すべり痕とメタンハイドレート濃集帯(海底ジオハザードに密接に関係)の分布域,③平均年降水量が多い土砂供給源域(主に紀伊山地).①~③を踏まえた分析の結果,熊野灘付近は,海底ジオハザードが顕在する領域であることが分かった.なお日本海側でも,富山湾付近において海底地すべり痕や,高い年降水量による土砂輸送ポテンシャル,メタンハイドレート濃集帯等の重合域を確認した.以上の情報を洋上風力発電施設の実証及び計画海域と照合すると,和歌山県西部沖や遠州灘沖などの導入・計画海域等については,海底ジオハザードマップとの重なりが認められ,詳細な海底ジオハザード評価の必要性を確認した.以上から,上述の海域では地震動等に伴って生じる海底地盤流動のダイナミクスを十分に考慮したリスク評価や施設健全性を精査する必要があることがわかった.最後に,既存研究に関する資料調査を別途実施した.これにより,液状化によって完全に流動化した土砂は,高密度流体としてモデル化し得る可能性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象海域の海底地盤の液状化危険度のスクリーニングにより,堆積土砂の流動ポテンシャル領域を確認したとともに,調査研究を通じて進行性液状化現象を前提とした海底地すべり流動の予測モデル開発に有益な液状化土の密度パラメータなどを得ることができ,令和5年度以降の研究推進の目処がついた.
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今後の研究の推進方策 |
継続して海洋エネルギー発電の導入海域における海底地盤情報(N値および土質・地質情報)の調査を実施する.さらに,高密度流動体近似とするモデルを含め,詳細な海底地すべり流動現象(凝固・圧密過程)を評価可能なモデルの開発を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
海底地すべり流動によって流動危険度を有する可能性が高い洋上風力の推進海域は60m以深であり,粒子法におけるシミュレーションコストとしてより高性能な演算処理性能が必要であると判断された.そこで予定していた仕様の電子計算機の購入を中止し,その費用は年度の直接経費と合わせてより高性能な電子計算機の購入に使用する.
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