研究実績の概要 |
金属サイトとカルコゲンサイトを多元素固溶したハイエントロピー型のAgBiSe2-xTexSxの合成を行い、熱電特性等の詳細な解明を試みた。SPring-8における放射光X線を用いて、X線回折パターンの温度依存性を明らかにした。AgBiSe2では、温度増大に伴い、Hexagonal、Rhombohedral、Cubic構造へと構造相転移することが知られていた。本研究において、Seサイトを等量のSとTeで置換していくと、x量増大に伴い構造相転移温度が低下していき、x=0.6以上で高温相であるCubic構造が室温でも安定化することを見出した。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察からAgとTe濃度が局所的に増大したChemical ordering(CO)が生じていることを明らかにした。放射光X線回折を用いた構造解析から、独立サイトであるAgサイトとBiサイト間でAnti-site disorderが生じており、x量の増大とともに増大することを明らかにした。また、Anti-site disorderの増大が熱伝導率の低下に寄与していることを示唆する結果を得た。x=0.3~0.7で格子熱伝導率が0.3(W/mK)と非常に低い値を示し、ZT~0.9(T = 723 K, x = 0.3)を示すことを明らかにした。また、層状物質のBi2Te3や122型Zintl相のハイエントロピー化にも取り組んでおり、多元素固溶した新しいハイエントロピー型のBi2Te3や122型Zintl相の合成に成功している。特に、溶融法によって、(Ca,Sr,Eu)Zn2Sb2の単結晶体を作製することにも成功した。また、このほかにも高温超伝導体としても知られる122系鉄カルコゲナイドのハイエントロピー化にも成功し、単結晶体作製にも成功している。
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