研究実績の概要 |
ハイエントロピー合金(HEA)の概念を化合物へと拡張した熱電材料の開拓を実施してきた。昨年度に引き続き、温度増大に伴いHexagonal、Rhombohedral, Cubic構造へと相転移を示すAgBiSe2に対して、Seサイトの多元素固溶によるHE化を実施した。これまでに、HE化によって、Cubic構造が安定化できることを報告した。HE型AgBiSe2において、層状構造を有するHexagonal構造における格子熱伝導率低減の起源解明を試みた。x増大による多元素固溶が大きな格子の乱れや歪みの導入が格子熱伝導率の低減に寄与し、熱電性能の向上に繋がっていることを明らかにした(論文投稿中、arXiv番号:arXiv:2405.02601)。また、AgBiSe2系で最も高い熱電性能を示すCubic構造において、多元素固溶が熱電性能に与える影響を解明するため、クエンチ処理によって、x = 0.0, 0.2, 0.4, 0.6の4試料全てをCubic構造化することに成功した。室温以下の熱電特性の評価から、x増大に伴い熱電性能が増大していくことを見出した。また、Cubic構造では、Hexagonalとは異なりx増大による格子熱伝導率の低減には原子の質量差のみが寄与していることを明らかにした。また、ZTはx量増大に伴い系統的に向上していくことを見出した(論文投稿中、arXiv番号:arXiv:2404.00984)。
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