研究課題/領域番号 |
22K14482
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
武田 泰明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (10880966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高温超伝導線材 / 超伝導接合 / 高温超伝導 / 超伝導マグネット / 微細組織 / 永久電流 |
研究実績の概要 |
本年度は主に、2本の短く切った市販Bi2223高温超伝導線材をつないだ、約10cmの直線形状の超伝導接合試料を作製した。まず、接合特性として重要な電流容量(臨界電流)と、接合の微細組織を、各試料で評価した。接合部分の密度が高いほど、電流容量が大きくなることを実証し、密度が接合特性の支配因子であることを明らかにした。これは線材やバルク材などの従来のBi2223材料でも良く知られる現象だが、超伝導接合という新しい材料においても従来材料と同様に扱うことができることを初めて指摘した研究である。 上記に基づいて、従来材料で高特性化に有効であることが知られている一軸加圧中での熱処理(ホットプレス)を使った接合作製手法を開発した。加圧によって接合部分の密度が上昇し、従来プロセスよりも短時間で大きな電流容量の超伝導接合が作製できることを実証した。超伝導接合は、永久電流(ほぼ減衰しない電流)で運転する超伝導マグネットの製造プロセスの一つである。大型のマグネットでは接合数が100個以上にもなるために、短時間で高特性な接合が作製できることが望ましい。接合特性の支配因子に立脚することで、こうした実際のマグネット製造に適する接合作製プロセスが構築できることを、この研究によって指摘した。 もう一つの接合特性として、超伝導マグネットで永久電流を実現するための低い接合抵抗も重要である。そこで、約1.6m長の1本の線材を3回巻きのループにし、その両端部分を折り返し形状に接合した試料を使った、接合抵抗の評価と支配因子解明にも着手し始めた。超伝導状態でループに流した電流の緩やかな減衰を理論的に解釈することで、接合抵抗を評価し、さらに特定の物理量(温度や時間など)が接合抵抗の支配因子になりうることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に、接合特性として重要な電流容量(臨界電流)の支配因子の解明を行った。従来材料と同じ支配因子が適用できる可能性が高いことを指摘できたこと、さらにそれに基づいた一軸加圧熱処理による接合作製プロセスを開発したことは、当初の計画以上の進展ともとらえられる。しかし、接合に特有の支配因子が存在するかどうかについては考察が進められておらず、今後の課題として残っているため、総合的にはおおむね順調に進展していると考えている。 また、もう一つの重要な接合特性である接合抵抗についても、その評価と支配因子の解明に着手し始めた。こちらも当初の計画通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
接合抵抗は重要な接合特性であるが、本年度はその評価と支配因子の解明に着手し始めたところであった。次年度は、この接合抵抗についても、電流容量(臨界電流)と同様に従来材料と同様の扱いが可能であるのかどうか、接合特有の支配因子は存在するのかなどの研究を主に進める予定である。 また、もう一つの重要な接合特性である電流容量(臨界電流)についても、接合に特有の支配因子が存在するかどうかについての考察を深める予定である。具体的には、今年度は実施しなかった支配因子になりうる評価項目(接合部分の化学組成や密着度)についても評価を試みる。 これらの研究から、接合特性の支配因子の総合的な解明に取り組みたい。さらに、その解明した支配因子に基づいて、特性を自在に制御できる接合プロセスの構築にも着手し始めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、旅費を他の予算で計上したため、および、消耗品(主には試料作製のための原料粉末や金属、高温超電導線材などの原材料)の使用量が想定よりも少なく物品費の使用量が抑えられたためである。次年度も物品費は主に消耗品で使用する計画であり、本年度購入しなかったために在庫が少なくなった消耗品の購入に充てることを考えている。
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