研究課題/領域番号 |
22K14490
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
李 禮林 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40850714)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微細周期構造 / ナノ/マイクロ加工 / 動的濡れ制御 / 濡れ性 / シランカップリング / ミクロ接触線 |
研究実績の概要 |
自然や実用の表面は複数の化学的組成からなる異質複合表面が主であり、また様々な長さスケールの粗さがランダムに存在する。そのため動的濡れの学理が応用場面に波及するためには、表面の物理化学的異質性を考慮した固-液接触線挙動の理解が必要であり、究極的なマクロ流れの全体制御が可能になる。そこで本研究では、異なる長さスケールの異質複合表面における動的濡れ現象を接触線移動速度と接触線のミクロ形状の面で探索する。 1年目は当初の計画通り、複数の異質表面(分子構造由来の異なる濡れ性を持つ複数の表面)からなる複合表面を作製した。ガラス基板表面におけるリソグラフィとシランカップリングによる複合表面を予備実験で作製していたが、ガラス基板由来の数ナノスケール粗さは分子配列を阻害する要因となっていたため、数オングストロームの粗さを持つシリコンウエハーに変更し作製を行った。形成した分子膜は原子間力顕微鏡、分光エリプソメーター、角度可変偏光式フーリエ変換赤外分光により評価を行うと共に長さスケールの異なる濡れ性パターン表面が作製できた。表面における高速濡れ広がり、接触角ヒステリシスなどダイナミクスを含む濡れ性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定より分子膜の特性を様々な手法で評価できている。PEG鎖の違いを持つシラン分子でPEG側分子鎖の長いほうが濡れ速度が遅れると共に低ヒステリシスを示すこと、それに対しメチル鎖についてはそのような違いが表れないことが分かった。分子の特性により濡れ性複合化は濡れダイナミクスを改善することも、妨げることも可能であることが明らかになり、複合化における濡れ性パターンの長さスケールの違いに対しても分子特性によってことなる傾向を示すことが示されてきた。予定通りプロセスが進んでいて、異質ドメインの割合、ドメインサイズ、ドメイン形状の対称性、物理的凸凹の有無を考慮にした上で、表面異質性が液滴の動的濡れに与える影響を定量的に評価するとともに、異質表面特有な現象が発現される時空間領域を明らかにする本研究の目的に応じた有意義な結果が得られているため順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
分子膜の配向や密度を含むより高次の物性を含め評価し、濡れダイナミクスにおける結果を分子の振る舞いの観点で理解する。長さスケールの異なる複合表面作製と評価を重ねると共に、分子スケールでの複合化も進める。今後は接触線のミクロ計測に注力しながら質複合表面における接触線物理のダイナミクスを理解を突き詰め、動的濡れの時空間制御における理論ファクターとそのモデルを考える。
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