研究課題/領域番号 |
22K14491
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
CHIU WANTING 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10835870)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Ni-Mn-Ga / 強磁性形状記憶合金 / 形状記憶合金 / 磁気冷却 |
研究実績の概要 |
本研究では、分散相として使用するBi元素を微量添加することによって、意図的にNi-Mn-Ga合金の結晶粒を分散し、脆化した。脆化した粒子を一定な温度でNi-Mn-Ga-(Bi)合金を機械粉砕し、単結晶粒子を成功に作製した。さらに、前述の粒界工学を行うことによって、欠陥が極めて少ない単結晶Ni-Mn-Ga粒子の作製を達成できた。熱分析、微細構造などの観察により、本研究で作製したNi-Mn-Ga粒子は、単結晶であることを確認した。 また、Biの添加量を最適化するために、Biの添加量を微調整した。0.00、0.01、0.03、0.05 at.%のBiをそれぞれ、Ni-Mn-Ga合金にドーピングし、インゴットを作製した。Biの微量添加によって、明瞭的な結晶粒微小化が観察された。0.05 at.%のBiの添加の合金では、微かなBiがNi-Mn-Ga合金に固溶した。一方、0.03 at.%のBiを添加した合金では、Biの固溶量が極めて少ないうえ、結晶粒の大きさは、0.05 at.%のBiを添加した合金とほとんど同程度であることを確認した。以上のことから、0.03 at.%のBiの添加量は最適である。 さらに、機械粉砕の効率を確認するために、Biを添加したNi-Mn-Ga合金をそれぞれ2Dと3Dの分析を行った。微細組織の観察(SEM像など)で2Dの分析を行った。一方、粉砕した単結晶粒子の異なる大きさの分布で3Dの分析を行った。本研究で実行し機械粉砕は、効率的に欠陥が極めて少ない単結晶Ni-Mn-Ga粒子を作製することができたと確立した。 それらの単結晶粒子を利用し、(1)単結晶Ni-Mn-Ga粒子/シリコーンゴムおよび(2)単結晶Ni-Mn-Ga粒子/Cu薄膜の複合材料を創成した。単結晶Ni-Mn-Gaバルク材料とほぼ同程度の形状変形を達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本若手研究は、おおむね当時の予想通りに進展している。Bi元素の微量添加による単結晶Ni-Mn-Ga粒子の作製や、最適化、作製効率等の確立は順調に確認できた。複合材料の作製は、試行錯誤を重ねて成功した。作成の工程を改良するために、予想以上の時間をかかったが、おおむね予定通り進展してきた。 2022年度以前の予備研究の成果および2022年度からの研究進捗を加えて、本研究と関連する論文は4本が採択された。それぞれが、(1) Scripta Materialia 227 (2023) 115277, (2) Journal of Materials Research and Technology 23 (2023) 131-142, (3) Materials Chemistry and Physics 297 (2023) 127390, (4) Journal of Alloys and Compounds 926 (2022) 166862である. 2022年度で、(1)単結晶Ni-Mn-Ga粒子/シリコーンゴムおよび(2)単結晶Ni-Mn-Ga粒子/Cu薄膜の複合材料を創成した経験の元で2023年度も順調に進展していくと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、(1) 単結晶Ni-Mn-Ga粒子/シリコーンゴムおよび(2) 単結晶Ni-Mn-Ga粒子/Cu薄膜の複合材料を成功的に創成した。また、それらの複合材料の変形特性や、変形機構等を解析した。 実用するために、(1) 単結晶Ni-Mn-Ga粒子/シリコーンゴムの複合材料のサイクリック安定性や、長期安定性などの評価を行う予定である。また、鉄粒子を添加することによって、有効磁場を増加することも予定している。一方、(2) 単結晶Ni-Mn-Ga粒子/Cu薄膜の複合材料は、これまで、単層のものができたが、アクチュエータ、磁気冷却への応用のために、多層材料や、高い体積分率の単結晶Ni-Mn-Ga粒子で構成される複合材料を創成することを予定している。 本研究グループでは、本研究を実行するための装置が充実しており、順調に単結晶Ni-Mn-Ga粒子の作製およびそれらで構成される複合材料を作製することができると考えられている。また、現在本若手研究の代表者が、その場の観察ができる特殊なin-houseホルダーを作製している。今後、以前より、複合材料の変形機構の更なる解析を取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度では、本若手研究の代表者は、民間研究助成も採択され、金属の原材料や、高温処理用の消耗品(石英管、ガス雰囲気など)は、本若手研究経費に限らず、別の研究経費からも補填があったため、物品費が抑えており、その代わり、海外の学会参加費(例:TMSや、MRSなどの大型の材料系の国際学会)に使用した。上記のことから、次年度使用額が生じた。 次年度使用できる額で、磁気冷却のパフォーマンスを測定できる赤外線カメラを購入する予定である。また、本若手研究の代表者が自作しているその場測定ができるin-houseホルダーの作製も予定している。次年度使用できる額を今後の研究には最大利用し、更なるの変形機構や、磁気冷却の効率等を解析できる。
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