研究課題
本年度においては、サイクル熱処理により作製されたバルク単結晶試験片を使用し、室温から4.2Kの極低温までの機械試験を行い、弾性歪みやヤング率を含む合金の弾性特性が系統的に評価された。その結果、ヤング率の温度依存性が小さいことが明らかになった一方、低温になるほど応力誘起マルテンサイト変態が生じ、純粋な弾性歪みが低下することが確認された。室温から極低温までの弾性定数の測定結果からは、無応力状態でマルテンサイト変態の先駆現象である弾性軟化母相が見られず、温度変化によっても安定性は保たれることが分かった。これは、極低温域を含む広い温度範囲において低応力で低ヤング率と比較的大きな弾性歪み(>1%@150K)が示されることを意味する。高応力下ではマルテンサイト変態が誘起されたが、除荷によって逆変態が起こり、極低温で擬弾性による大きな可逆歪みが生じることが明らかとなった。また、低温での擬弾性変形では良好な繰り返し特性が示される。合金設計によって母相の相安定性を向上させることで、低温での応力誘起マルテンサイト変態を抑制できる組成が見出されたが、高温相平衡の観点からその組成では異常粒成長による単結晶の作製が不利であることが分かった。以上の結果から、Cu-17Al-14Mn (at%)合金は低ヤング率および高復元力が要求される極低温シール材に素材として有望であると推測される。今後としては、企業と連携し、シール材の試作とシーリング特性の評価等を進めていき、極低温シール材への応用可能性を検討する予定である。
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Journal of Materials Research and Technology
巻: 30 ページ: 3220~3225
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J-PARC Annual Report 2022
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https://www.fris.tohoku.ac.jp/researcher/creative/shengxu.html