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2022 年度 実施状況報告書

大自由度に起因した多彩な凝固過程の解明に基づくハイエントロピー鋳造合金の設計

研究課題

研究課題/領域番号 22K14522
研究機関京都大学

研究代表者

勝部 涼司  京都大学, 工学研究科, 助教 (10839947)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワードハイエントロピー合金 / 鋳造材料 / その場観察 / 能動学習 / 状態図
研究実績の概要

ハイエントロピー合金(HEA)のような多元系状態図の中央付近の組成の材料の設計には,組織観察と状態図へのプロットで構成される従来の合金設計の手法の適用が難しい.本研究の目的は,機械学習の一種である能動学習の手法を取り入れ,さらに放射光を用いたその場観察・分析方法を組み合わせることで,合金材料の設計スキームを再構築することである.
本年度はCr-Mn-Fe-Co-Ni系について,能動学習の入力データを構築すべく数10種類の組成を有する合金を作製し,全てに対して示差走査熱分析(DSC)を行った.さらに,DSC測定で複数の吸/放熱が観測された組成については放射光を用いた凝固過程のその場X線回折(XRD)測定を行うことで,凝固過程に現れる相を同定した.これらの結果を入力データとし,能動学習手法であるuncertainty samplingを利用することで初晶として面心立方構造(FCC),体心立方構造(BCC)のどちらが晶出するかを表すphase mapを作成した.
また,FCCを初晶とする合金では溶質濃度に依存してデンドライトの優先成長方位が[100]から[110]に変化する場合があることが知られている.本研究で作製した種々の組成を有するFCCを初晶とするCr-Mn-Fe-Co-Ni合金の優先成長方位を時間分解X線トモグラフィとXRDの同時計測によって決定したところ,いずれも[100]方向に成長することが分かった.この結果から,この合金系では多元化によって物性に及ぼす特定元素の影響が相殺していることが示唆される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は能動学習の入力データとする種々の組成についてDSCの測定と凝固その場XRDによる相同定を完了した.さらに,能動学習手法であるuncertainty samplingとベイズ最適化を実行するpythonコードについては使用環境構築が終わっており,phase mapの構築とその精密化のループを始められている.それだけでなく,入力データ取得のために作成した種々の合金についてデンドライト成長の特徴を評価することで凝固科学にも資するデータを取得できた.従って,概ね順調に進展していると評価する.

今後の研究の推進方策

本年度作成したデータに基づいてuncertainty samplingによる「FCCを初晶とする組成域」の決定とその中でのベイズ最適化を行い,鋳造材として好ましい一致溶融組成を探索する.推薦された組成の合金を作製してDSC測定を行う他,放射光設備を用いた固液共存状態におけるその場蛍光X線分析を行うことで,一致溶融組成か否かを検証する.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Solidification sequence of CrMnFeCoCu dual-FCC multicomponent alloy2023

    • 著者名/発表者名
      Katsube Ryoji、Luo Litian、Nakano Keita、Narumi Taka、Yasuda Hideyuki
    • 雑誌名

      Scripta Materialia

      巻: 231 ページ: 115459~115459

    • DOI

      10.1016/j.scriptamat.2023.115459

    • 査読あり
  • [学会発表] 非等モル組成 Cr-Mn-Fe-Co-Ni合金におけるデンドライトの優先成長方位2023

    • 著者名/発表者名
      土久里成弘, 勝部涼司, 鳴海大翔, 安田秀幸
    • 学会等名
      日本金属学会2023年春期第172回講演大会
  • [学会発表] Solidification phenomena in CrMnFeCoNi and related alloys revealed by X-ray imaging techniques2023

    • 著者名/発表者名
      Ryoji Katsube, Shigehiro Tokuri, Takumi Tomiyama, Keita Nakano, Litian Luo, Taka Narumi, and Hideyuki Yasuda
    • 学会等名
      International Workshop on High-entropy Alloys
    • 国際学会
  • [学会発表] ハイエントロピー合金の凝固組織形成: Cantor合金とその派生系に着目して2022

    • 著者名/発表者名
      勝部涼司, 土久里成弘, 冨山拓己, Luo Litian, 中野敬太, 鳴海大翔, 安田秀幸
    • 学会等名
      2022年度応用物理学会多元化合物・太陽電池研究会年末講演会
  • [学会発表] Mo-Nb-Ta-V-W合金におけるミクロ偏析低減の可能性とBCC二相分離2022

    • 著者名/発表者名
      土久里成弘, 中野敬太, 勝部涼司, 鳴海大翔, 安田秀幸
    • 学会等名
      日本金属学会2022年秋期第171回講演大会
  • [学会発表] Cr-Mn-Fe-Co-Cu合金の凝固・固相変態による組織形成の特徴2022

    • 著者名/発表者名
      冨山拓己, 勝部涼司, 鳴海大翔, 安田秀幸
    • 学会等名
      日本金属学会2022年秋期第171回講演大会

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公開日: 2023-12-25  

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