研究課題/領域番号 |
22K14528
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鵜殿 寛岳 東京工業大学, 情報理工学院, JSPS特別研究員 (50895761)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人工細胞 / マイクロ流体デバイス / DNAナノテクノロジー |
研究実績の概要 |
1つ目は、従来から取り組んでいる光制御DNA液滴の論文投稿である。DNAに挿入した光異性体化合物アゾベンゼンが、光の波長に応じてDNA相補鎖同士を結合・分離させることが知られている。研究員は、アゾベンゼンを、DNA液滴を構成する粘着末端に挿入することで、液滴の相変化を光制御できることを示していた。この成果を、国際的な評価が高い一般誌に投稿し、約半年にわたる長期の査読の後、修正投稿可の決定を得た。2つ目は、この光制御DNA液滴が連続的な可視光の照射のもとで自発的な運動・変形・分裂をする挙動の研究である。研究員が偶然発見したこの現象により、生物由来のモータータンパク質を使用した従来のアクティブ流体とは異なり、完全に人工合成されたDNAとアゾベンゼンだけで、生命のような振る舞いを再現できる可能性が示された。物理的なメカニズムを含めてまだ解明すべき点が多い。令和4年度において、研究員は、波長依存性、配列依存性、アゾベンゼン挿入位置依存性など網羅的に調べた。3つ目は、DNA液滴に関する総説の執筆である。研究員が取り組んでいる光制御DNA液滴の土台となるDNA液滴は、近年特にさかんに研究が行われている。研究員は、先行研究をまとめるだけでなく、今後の課題、広い視野での今後の研究の方向性などを議論して、生物学、生物工学に関する国際的な専門誌に投稿し、掲載決定の判断を得た。総説はエディターより高評価を得て、雑誌の表紙を飾った。4つ目は、水水系の液滴を生成するマイクロ流路の作製である。研究員が着目した液滴生成手法は、流路のジオメトリが急激に変化するように設計する必要があり、2段階でマスク露光をする必要があった。SU8を用いてこの2段階露光の試作を提携先の研究室の設備を用いて行った。精度に問題があったものの、流路デザインの工夫をする上で有用な指針を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
投稿論文の査読期間が半年近くかかり,予想より大幅に遅れたため,予定していた研究スケジュールの見直しを迫られた.また,DNA液滴の自発的な運動を偶然に発見したため,こちらの研究を急遽すすめることになった.
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今後の研究の推進方策 |
修正決定を受けた論文の修正投稿に全力を尽くす.エディターが指定した追加実験を完了させる.DNA液滴の自発的な運動に関する物理的なメカニズムを詳細に調べる.競合するグループが同じ現象を発見する可能性があるため,優先的に取り組む.マイクロ流体デバイスの開発については,二重露光の精度に大きな課題があることが判明したため,申請書に記載した研究計画の修正・見直しも含めて,引き続き開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
受入研究室の備品の拡充にともない,支出計画に修正があった. 今年度は,マイクロ流路デザインの見直しを検討するために,3Dプリンターを用いたモールドの作製を実施する.所属研究室の3Dプリンターで付属のレジン(硬化剤)を使用すると,PDMSが固まらないことが判明している.PDMSとの相性が良いレジンを探し,これを購入する予定である.また,光制御DNAの自発的な運動の研究を行うため,ピークの励起波長が400nmを少し上回るキューブフィルターのカスタマイズを実施する.ピーク位置がまったく同じであるが,UV領域を含む・含まないの微調整を細かく調整し,業者に発注する.
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