研究課題/領域番号 |
22K14530
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
大崎 修司 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40802426)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ソフト多孔性結晶 / ZIF-8 / 圧力スイング造粒 |
研究実績の概要 |
ソフト多孔性結晶(SPC)は構造転移(体積膨張)を伴い吸着量がステップ状に増加する特異な吸着挙動を発現するため様々な応用が期待されている。しかし,合成される材料は微粒子であるためハンドリング性が悪く,それが開発・実用化の発展を妨げている。本研究では,微粒子であるゆえの付着凝集性を活かし,特異的吸着挙動を維持しながら凝集体を形成することで,従来までの課題を解決する。具体的に,まずバインダーレス造粒が可能な小型圧力スイング装置を開発し,造粒条件が凝集体構造と吸着性能に及ぼす影響解析(実験的検討)を行う。さらに,数値流体計算と離散要素法をカップリングさせたモデルを用いた凝集体形成過程の数値解析(理論的検討)も組み合わせることで,凝集体形成過程の支配因子を明らかにし,SPC凝集体の構造制御手法を提案する。2022年度の研究実績は以下の通りである。 1. SPC粒子の検討に先立って,モデル粒子として炭酸カルシウム粒子を用いた圧力スイング造粒を試みた。圧力スイング造粒法における操作条件は,粒子量,上下方向それぞれの圧縮ガス量,流動化/圧密時間・回数と多岐に渡るため,操作条件が炭酸カルシウム粒子の造粒に与える影響を検討した。その結果,圧縮ガス量と流動化/圧密回数が鍵因子であることを明らかにした。また,ごく少量の結合剤を使用することで強度の高い造粒体が得られることを見出した。 2. ZIF-8(Zeolitic Imidazolate Framework-8)を対象とした圧力スイング造粒に向けた基礎検討を進めた。ZIF-8粒子は一度に数10g程度しか合成できないため,少量での圧力スイング造粒を行う必要がある。そのために必要な小型の造粒機をダルトン(株)と共同して設計し,2023年度に導入予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SPC粒子の検討に先立って,モデル粒子として炭酸カルシウム粒子を用いた圧力スイング造粒を試み,圧縮ガス量と流動化/圧密回数が鍵因子であることを明らかにした。 また,ZIF-8(Zeolitic Imidazolate Framework-8)を対象とした圧力スイング造粒に向けた基礎検討を進めた。ZIF-8粒子は一度に数10g程度しか合成できないため,少量での圧力スイング造粒を行うために必要な小型の造粒機をダルトン(株)と共同して設計した。これらの成果は,目標達成へと直結する重要なものであり,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に設計した小型の圧力スイング造粒機を導入し,ZIF-8粒子の圧力スイング造粒法を試みる。造粒条件を変更しつつ,圧力スイング造粒を行い,造粒プロセスに与える影響も含めて網羅的に解析する。このとき,凝集体構造を解析するために,凝集体を樹脂に包埋した後にFIB-SEMにより断面図を観察する。また,造粒物の流動性,吸着等温線/吸着速度測定を行い,実用性も評価する。異なる粒子径のZIF-8を用いて造粒し,凝集体が示すゲート吸着挙動の一次粒子径依存性を検討する。圧力スイング造粒法の造粒条件と凝集体の物性との関係を明らかにし,凝集体構造の制御手法を提案する。さらに,圧力スイング造粒法における凝集体形成メカニズムの解明に向けて,離散要素法(DEM)および数値流体計算(CFD)を用いた検討を行う。DEMによる粒子挙動の計算とCFDによる空気流体流れの計算を組合わせ,上下方向それぞれから交互に,一定時間ガスを送り込む操作を繰り返すなかで,粒子間の付着により凝集体が形成する過程を直接シミュレーションする。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の次年度使用額が生じたが,モデル粒子である炭酸カルシウムをダルトン(株)から提供いただき,材料費に経費がかからなかったためである。今年度の成果として,結合剤を使用することで強度の高い造粒物が得られることを明らかにしており,次年度も結合剤の影響を検討する予定である。次年度使用額は材料費として使用する予定である。
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