研究課題/領域番号 |
22K14531
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 滉一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (00828296)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アゾベンゼン / 光異性化 / 有機結晶 / 相転移 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
前年度に見出された、4-メチルアミノアゾベンゼンの光誘起結晶移動の過程で結晶内部の結晶微粒子が回転する現象について、エネルギー幅の広い白色X線を用いた時間分解X線回折による詳細な解析を行った。4-メチルアミノアゾベンゼンの結晶に酸化亜鉛の微粒子を混合したサンプルについて、光を照射しながらX線回折パターンを連続的に取得した。その結果、酸化亜鉛微粒子からの回折に基づく輝点が激しく動く様子が観測された。X線回折パターンにおける輝点の動きは、対応する微粒子の回転運動を示している。そのため、白色X線を用いることで各微粒子の回転運動の方向と変位を計算することが可能となった。光照射の強度が高いほど微粒子が激しく回転することが見いだされた。また、光誘起結晶移動が生じる粉末のサンプルと、光誘起結晶移動が生じない薄膜のサンプルで回転挙動の比較も行った。どちらのサンプルにおいても光照射によって微粒子が激しく回転することが示されたが、回転方向の異方性を計算すると、粉末サンプルのみが明確に回転方向の偏りを示した。光誘起結晶移動によって結晶内部に指向性をもった流動が生じ、その結果として微粒子の回転方向に偏りが生じたことが強く示唆された。本結果は光誘起結晶移動の機構解明につながる重要な知見であり、学術的に価値が高いことから、論文発表および国際学会における発表を行った。 また、チオール末端ポリスチレンで修飾した金の多面体ナノ粒子を4-メチルアミノアゾベンゼン結晶に導入して光誘起結晶移動を試みた結果、移動方向に沿ってナノ粒子が連なった構造が観察されるなど、ナノ配列構造の作製についても進展が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金ナノロッドなどの異方性ナノ粒子の配向を光誘起結晶移動によって制御することはまだできていないが、移動機構の解明につながる重要な成果が得られており、全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
粒径が200 nm程度ある大きなナノ粒子であれば結晶移動の方向に沿って連結構造を形成することが見出されたことから、サイズの大きなナノ直方体などを用いて配向制御を引き続き試みる。また、結晶移動には基板の表面状態も重要なことから、それらがナノ構造形成に与える影響についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
白色X線を用いた時間分解X線回折実験において、表面を疎水性に修飾した金ナノ粒子をプローブとして用いる予定であったため、そのための試薬の大量購入を当初は想定していた。しかし、安価な未修飾の酸化亜鉛ナノ粒子で代替できることが示されたため、予算に余裕が生じた。 その一方で、今年度は様々な形態の金ナノ粒子を疎水修飾したうえで、配列構造を作製することを主眼とする計画である。そのため、ナノ粒子合成および表面修飾の試薬購入や、合成した粒子の電子顕微鏡観察などに未使用分の予算を充てる必要がある。
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