| 研究実績の概要 |
本研究では、混合基質系における選択的触媒毒の作用機構を解明し、最適構造導出法の構築を目指した。特に最終年度においては、これまでに得られた知見をもとに、選択性高く水素化を実施するための反応装置を100mLスケールで設計し、連続運転に成功した。 Rh/SiO2触媒を用いた液相芳香族水素化反応において、従来モデルでは説明困難な混合基質効果として、プロピルベンゼンとトルエンの混合により前者の反応速度が120%以上加速する現象を発見した。この反応加速は気相反応では見られず、極性溶媒中の液相環境特有のものであることを実験的に確認した。吸着測定では、両基質の吸着が同期的に進行することが判明し、DFT計算によりトルエンとプロピルベンゼンが触媒表面上で非対称な会合体を形成することで、吸着エネルギーが低下し、活性化障壁が減少することが明らかとなった。これにより、Langmuir-Hinshelwoodモデルの競合吸着仮説を超える、新たな混合物反応機構を提示した。 また、並行して行ったPd触媒によるアルキンの部分水素化に関する研究では、21種の含窒素有機分子を触媒修飾剤として系統的にスクリーニングし、1,10-フェナントロリンがキノリンを上回る選択性向上効果を示すことを自動化フローリアクターを用いて実証した。DFT計算により、この修飾剤は非選択的な低配位Pdサイトに対して高い吸着エネルギー(-4.32 eV)を示し、選択性低下の要因となる部位を選択的に被覆することが示された。 これらの成果を通じて、触媒毒の選択的作用機構を分子論的に解明するとともに、反応系・触媒・修飾剤の三者間相互作用に基づく包括的な設計指針を提示した。触媒毒について、吸着エネルギーや混合基質との協奏吸着といった量的指標を用いたスクリーニングが可能であることを示し、今後の選択的触媒設計の高度化・自動化に資する基盤的知見を提供した。
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