研究課題/領域番号 |
22K14542
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 祐 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (70819284)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オペランド分光法 / エネルギー変換反応 / 物質変換反応 |
研究実績の概要 |
層状酸化物の層間に金属錯体からなる触媒活性サイトを導入し、層間を反応の舞台(=ナノ反応場)に見立てた電極触媒の合成に成功した。具体的には、活性サイトとして単一の金属錯体を用いるものに加えて、複数種の金属錯体が共存状態で存在するものの合成に成功している。オペランド分光法を用いて各種電気化学反応中の層間環境の観察にも成功した。顕著な知見を以下に示す。 (1)合成したナノ反応場においては、従来の活性金属の電子状態に加え、層間に共収容された溶媒分子の水素結合ネットワークが、触媒の活性に大きく寄与することが明らかになった。特に、第三体イオンと呼ばれる反応に直接関与しないイオン種の影響が、バルクでの電気化学反応と比較して顕著に現れることが分かった。 (2)合成したナノ反応場において、エネルギー変換反応(酸素還元反応)、物質変換反応(酸素発生、水素発生反応)に成功した。酸素還元反応については2電子経路が選択的に進行するなど、バルクとは異なる反応選択性を確認した。また、物質変換反応については、触媒活性サイト比率を制御することで、反応過電圧を低減できることが明らかになった。 (3)合成したナノ反応場において、収容された金属錯体そのものの酸化・還元反応を確認した。特に、還元反応によって、層間に金属ナノ粒子を析出できることを明らかにした。この層間に収容された金属ナノ粒子は、そのまま電気化学触媒もしくは触媒活性サイトとして利用できることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りナノ反応場の構築に成功するとともに、オペランド分光法を用いることで、実際に反応が進行している様子を捉えることに成功した。これらの結果により、ナノ反応場での電極触媒反応の活性を司る因子として、溶媒の水素結合ネットワークを新たに提案した。物質変換反応についても、ナノ反応場特有の隣接活性サイト間の協奏的反応メカニズムを確認しており、ナノ反応場に特有な、考慮すべき要素を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ反応場で進行する反応に大きく寄与する(1)水素結合ネットワークと(2)隣接活性サイトの協奏作用をより詳細に理解し、これらを実際の触媒材料設計に応用する。 (1)バルクでのカチオンによる水素結合ネットワークの変調現象を出発点として、ナノ反応場での水素結合ネットワークの制御方法を確立する。特に、触媒活性を持たないカチオン種を層間に共挿入することにより、能動的な水素結合ネットワークの変調を狙う。 (2)バルクでの異種金属共存による効果と対比させ、ナノ反応場での協奏作用を理解する。特に、オペランド分光法を軸とした反応解析により、異種活性サイト間で進行する電気化学反応素過程を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部消耗品の納期が昨年度中に見通せなかったため、次年度使用額として計上した。当該製品は次年度上半期までに納品される予定である。
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