触媒機能とその表面構造は密接に相関しており,触媒活性点の自在設計は触媒化学分野の根幹を担う課題である.本研究では,金属酸化物クラスターの局所構造制御に基づき,担体上の金属ナノ粒子との複合化による固体塩基触媒機能の開拓を目的とする.具体的には,担持金属ナノ粒子表面に塩基触媒作用を示す金属酸化物クラスターを修飾し,塩基触媒作用と担持金属種が有する酸化還元能が協奏的に機能する複合型活性点の創出と,その活性点構造の制御並びに機能開拓に取り組む. 令和5年度は,昨年度に引き続き,担体上に担持した白金及び銀ナノ粒子とLindqvist型のニオブ酸化物クラスターの複合化による触媒活性点の制御を行った.ニオブ酸化物クラスターの修飾量を変えることで白金ナノ粒子との界面を制御し,CO2を炭素源としたピぺリジンのNホルミル化の活性の高効率化を達成した.また,担持銀ナノ粒子とニオブ酸化物クラスターの複合体を用いたアルコールとアミンの酸化的カップリング反応において,銀ナノ粒子の酸化能とニオブ酸化物クラスターの塩基点,担体であるアルミナのルイス酸点の協奏により高効率に反応が進行することを見出した.また,銀ナノ粒子表面を高密度にニオブ酸化物クラスターで修飾することで,イミンの水素化を抑えて高選択的なイミン合成を達成した.以上のように,本課題においては,種々の担持金属ナノ粒子に簡便な吸着法により金属酸化物クラスターを修飾し,その塩基触媒能との協奏で駆動する触媒系を構築した.均一系金ナノ粒子の保護配位子として金属酸化物クラスターを用いた例はあるが,対象となる金属種は限定的であった.本課題において種々の担持金属ナノ粒子表面を金属酸化物クラスターで自在設計し,その界面が機能する協奏型活性点を設計できたと考えている.
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