研究課題/領域番号 |
22K14544
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 将人 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (60826965)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微生物培養 / 液内振盪培養 / 振盪フラスコ培養 / ガス制御システム / 二酸化炭素換気能 / 酸素供給能 / 換気エンハンサー / モニタリングデバイス |
研究実績の概要 |
微生物を用いた液内振盪培養中は、意図せず初発とは異なるガス環境を形成することが多い。その要因は、振盪の中断を含むサンプリング操作だけでなく、振盪下の培養器のポテンシャル(酸素供給能に対して二酸化炭素換気能が低い)に起因する。また、培養器内のガス環境の制御を試みた研究は、モニタリングデバイスを活用した電子制御や混合ガスの強制通気など大掛かりであり、液内振盪培養の特徴を損ねる内容に限定されているのが現況である。 このような背景の中、簡便に培養器の換気能を増大させることで、液内振盪培養の特徴を維持しながら微生物培養中の意図せぬガス変動を抑制し、ガス環境を制御できるのではないかと着想を経て、独自に開発した換気エンハンサーであるNeBP(Nonelectric Bellows Pump)を利活用した。NeBPは、振盪基盤のデッドスペースに設置でき、バレル内に固定されたベローズポンプと装填された硬球によって、電力を追加することなく機能する。 具体的には、培養内外のガスを迅速に置換できるように、NeBPの構成パーツであるベローズと硬球を最適化した。種々のNeBPを、微生物培養で多用されている培養器(通気性を有した培養栓付き三角フラスコ)に外付けし、独自に設定した二酸化炭素半減期(培養器内に充填した二酸化炭素が外気[新鮮空気]と自然換気され半分の濃度に到達するのに要する時間)を指標に検討し、10分未満の条件を見出した。 市販の振盪基盤付きガスインキュベータを用いて微生物培養すると、培養中の培養器内のガス濃度が設定濃度と異なるが、最適化されたNeBPを付与することで、これまで生じるオーバーシュートを解消でき、微生物挙動が改善された。本年度では主に、培養器の気相部のガス換気能に注目し、従来の液内振盪培養法の構成要素を維持しながらガス制御システムを構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的と計画に従い、1年目の目標として、純粋培養を介したガス環境の広範化と立体化を掲げており、当該目標をほぼ達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
微生物を用いた生産技術の開発や改善を図るうえで、作業しやすいスケールで低コストかつ多検体を検討できる液内振盪培養法は重要な培養技術である。従来の液内振盪培養では制御不可能であったガス環境を設定し、好気的な振盪培養下における単一微生物や微生物集団のガス応答を調査する。得られた知見から、微生物資源の真価を最大化させるため、ガスに着目した新規液内振盪培養法を提案する。 具体的には、NeBPと振盪基盤付きガスインキュベータの併用により、酸素と二酸化炭素のバランスを制御し、未生産の代謝産物や未培養の微生物を従来法(ガス未制御)と比較し、有効性を検証する。特に、二酸化炭素はpHと関係深いため、培地のpHに留意する。また、バイオプロセス開発の上流で多用されている液内振盪培養法の特徴(高い利便性と並列性)を維持できるように研究を展開する。
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