研究課題/領域番号 |
22K14554
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 憲志 京都大学, 化学研究所, 特定助教 (30888954)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 元素間相溶性 / 全率固溶型合金 / ナノ粒子 / 規則構造 |
研究実績の概要 |
固溶合金の規則合金化はその物理的・化学的特性を劇的に変化させる有効な手段である。 ところが、全率固溶型合金、例えばCo-Pd合金に対する長距離にわたった規則構造化はいま だかつて達成されたことはない。そこで本研究では、全率固溶型合金であるCo-Pd合金系の長距離にわたった規則構造の形成を目的としている。申請者は最近、FePd3合金にFeとは固溶できずPdとは固溶可能な第三元素を導入することで、前例のない規則構造の形成に成功している[1]。この固溶できない特徴を反映して、Feと導入元素が配位しない構造をとっていたため、CoPd3合金に対してもCoとは固溶できずPdとは固溶可能な第三元素を導入することで、導入元素とCoの原子位置が定まる、つまり規則構造の形成が可能と考えた。 現在はCoとは固溶できずPdとは固溶可能な元素としてAuを選択しており、三元素が原子レベルに混合したナノ粒子の合成まで達成している。Co-Pd-Auの三元系相図をみると、Co-PdとPd-Auの二元系相図と同様に全組成で固溶型合金のみ形成可能であることが報告されているが、実際に合成した粒子ではCo-PdとPd-Auの二元系固溶型合金がクラスターサイズで混合したナノ粒子が形成されていることが分かった。目的としていた規則構造の形成には至っていないが、たしかにCoとAuが極力隣接するのを避けた構造を形成しており、元素間相溶性による結晶構造制御の可能性が確認された。
[1] K. Matsumoto et al., Nat. Commun. 2022, 13, 1047.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定通りCoPdAu合金系において、三元素が原子レベルで混合した規則構造の形成を目的としたが、実際にはCo-PdとPd-Auの二元系固溶型合金の相分離体が形成された。この現象についてはさらに計算や他の合金系においても検証していく必要はあるが、元素間相溶性が全率固溶型合金においても、結晶構造の制御因子になることがわかった。したがって、申請者が目的とする「全率固溶型合金の長距離にわたった規則構造の形成」に一歩前進したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、申請書で記した予定通り、Au以外の第三元素M(M = Pb, Cd)をCoPd3合金に導入した系に対しても同様に合成を行っていく。また、それぞれの系で得られた相の安定性について、第一原理計算を用いて議論することで、「全率固溶型合金の長距離にわたった規則構造の形成」の学理構築に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
去年度の使用額が予定よりも少なかった理由は、去年度の末からHF処理を業者に頼もうとしたが思ったよりも高額だったため、落ち着いて今年度利用するか検討したいと考えたためです。 あと、コロナによる出張制限が解消され、九州大学での電子顕微鏡の利用(コロナ中はオンラインでの利用が可能だったが、コロナが明けてからは基本現地でのみ利用とのこと。)を現地で行うことが増えるため、その分科研費の使用が見込まれたためです。
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