研究課題/領域番号 |
22K14571
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
室賀 駿 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20849947)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ネットワーク構造 / カーボンナノチューブ / セルロースナノファイバー / 画像解析 / 機械学習 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブやセルロースナノファイバーに代表されるネットワークを形成する材料は、軽量性、柔軟性、高比表面積、等の優れた特性を期待されて特にエレクトロニクスの分野において注目を集めてきた。膜、電極、糸などの多様な用途への展開を目的にネットワーク構造の研究が取り組まれてきたが、試行錯誤の中では本質的なネットワークに対する理解が充分であるとは言えず、更なる部素材の特性向上のためには、本質的な構造の理解と材料設計指針の確立が今後必要不可欠である。これを踏まえた本研究の目的はネットワーク構造と複雑な特性との相関性を評価可能な新たな解析手法の開発と、それによる複雑な複合ネットワーク構造の解明である。 今年度はカーボンナノチューブとセルロースナノファイバーを中心にネットワークを形成する材料を用いてミキサーによる分散と吸引濾過法によるバッキーペーパーの作成と評価を行った。これにより用いる材料と分散状態によりネットワーク構造のトポロジーが大きく異なっていることが確かめられた。ネットワーク構造の解析方法に関しては、走査型電子顕微鏡による構造評価と画像解析法を検討した。具体的には走査型電子顕微鏡画像全景を処理する画像解析法に関して検討し、画像全体からネットワーク構造の部位を抽出した上で、効果的に空隙、バンドル、絡み合いといったトポロジーの定量的数値化を可能にした。こうした材料の特性との間で相関解析を行い、一定の相関性を持つトポロジーが走査型電子顕微鏡画像から得られていることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ネットワーク構造を形成する材料の作成、評価を行い、画像解析を用いることでネットワーク構造の数値化に成功した。これはネットワーク構造を形成する材料の特性制御に向けて重要な指針が得られる手法であると考えらえる。また材料の電気特性などとネットワーク構造の関係ランダムフォレスト回帰を含む手法による評価を行うことで、相関の抽出ができるようになった。また複合ネットワークを有する材料に関してもデータ取得を進めており、次年度に高度解析方法に関して検討を進める予定である。 また本年度及び次年度に国内スーパーコンピュータを含む外部計算資源による計算を研究課題開始前に検討していたが、所属研究機関で高度計算資源を活用できるようになった。このため実験による材料作製と評価の方へ予算を活用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ネットワーク構造の数値化に関する高度化及び特性との解析方法の検討に取り組む。特に複雑な絡み合い構造を示す複合ネットワークの構造抽出法に関して取り組む予定である。 想定される課題として、解析を行う上で十分な検体のデータを得るための材料作製の実験スループットと複合ネットワークの構造抽出がある。前者に関しては協働ロボットを用いた実験の自動化に関して取り組む。後者に関してはこれまで検討した手法の延長と、全く別の深層学習による画像解析の両パターンのアプローチに関して考えており、ネットワーク構造からの特徴縮約化を試みる。今年度までに試みた解析法も含めてさらなる高度化に取り組み、材料特性との比較から材料設計の指針となるような知見を得ることを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた外部計算資源による支出を必要とせずに本研究課題の遂行が可能になったため。その分次年度予算と合算して実験による材料作製のスループット強化に用いることを予定している。次年度予算と合わせて協働ロボットを用いたネットワーク構造作製・評価に資する物品の購入に使用する予定である。
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