今年度はカーボンナノチューブ(CNT)を中心に、合成、分散、熱処理といったプロセス条件とネットワーク構造の形成または変化を結びつけることを目的に、材料スクリーニングのスループット向上のための実験系の構築や、機械学習や深層学習といった解析手法の開発に取り組んだ。その中でも熱処理工程をモデル系として、マルチスケールなネットワーク構造の変化から、材料内部で生じている現象を紐解くための新たな手法としてtabular two-dimensional correlation analysisを提案した。特にCNTのような複雑な材料は原子スケールから、チューブ間、チューブ同士が束なったバンドル、バンドル同士の結合やその間隙といった異なる構造因子が部素材のバルク特性に影響する。そのため複雑な構造制御のためにプロセス条件を変えても同時に異なるスケールの構造が変化するため、何が変化し大きく影響しているのか現象を紐解くことが困難である。そこで本研究では二次元相関解析と階層的クラスタリングを組み合わせることで、変化させる条件に対する同調性と位相遅れの定量化を可能にし、人間が限られた実験データから現象を解釈するための技術を提案した。これにより例えばマルチスケールに異なる構造因子が変化した場合においても、同調して変化する成分の特定や、位相遅れを伴って変化する度合いから、構造因子の変動順序の規定が可能になる。実際に提案法の有効性を高温炭化炉でアニール熱処理を行ったCNT膜のデータセットへと適用することで検証を試みた。提案法を用いることで、低温域ではアモルファスカーボン由来の成分が、中温域ではバンドルが、高温域ではグラファイト化に由来した構造因子が変化しているという順序関係を定量的に明らかにすることに成功した。
|