研究課題/領域番号 |
22K14580
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
五十嵐 アン 東北大学, 工学研究科, 助教 (10865405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナノグレーティング構造 / 共振器 / フォトニックデバイス |
研究実績の概要 |
回折格子構造を有するリング共振器はリング円周方向に沿って光を伝搬しながら、動径方向に光が閉じこめられる光モードを生成する。本研究は、モード形成機構および物理特性緒を明らかにし、共振器バイオセンサなどへ応用するための基盤を築き上げることを目的とする。 本年度では、リング共振器の回折格子構造による同心円状の光共振モードの数値解析を行い、高いQ値を持つ高次モードの生成メカニズムを解明することを実施した。まずは、共振器構造の特徴による高次モードの高いQ値やモードの電磁分布を立証した(論文1,学会発表1)。そこで、リングのサイズ、回折格子の大きさおよび周期性における光共振の特性を把握し、高いQ値を制御する共振機器構造を導き出した。次に、外部の光源から共振器にカップリングするバス導波路の構造による共振モードや電磁分布の発生を検証した。バス導波路の出力のスペクトルを数値解析し、同心円状モードの生成があるが、共振モードが崩れ、Q値が大きく低減される課題があった。そこで、部分的にグレーティング構造を構築したバス導波路との組み合わせにより、従来のリッジ型バス導波路で得られなかった特性など、共振モードを維持しながら、Q値の低減を抑制することを証明した(学会発表2)。 これより、共振特性はバス導波路の構造依存性があることより、理論的な関係性を追及している。また、高いQ値と生成できる回折格子構造をもつ共振器を最適化し、SOI基板上にデバイス設計や実装デバイスの作製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階での初年度では、回折格子構造リング共振器による同心円状のモードの生成メカニズムおよび回折格子構造の依存性を解明することを目標にした。現状では、リング共振器および回折格子の構造による固有モードを検証でき、高いQ値の共振モード特性および磁界分布を解析できた。さらに、実用向けデバイスを作製するため、バス導波路とカップリングによる共振モードの変化を検証している。これらの成果を国内、国際学会で発表し、投稿論文にまとめた。本年度で得られた数値計算結果は今後の実装デバイスの作製に重要な成果である。現段階では、これらの結果からデバイスの作製および光特性評価の準備に順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
光損失を最小化する回折格子構造をもつ光共振器を最適することができたので、その成果に踏まえ、実装デバイスの実証としてSi光共振器導波路の試作および特性評価を行う。共振器の固有特性に影響するバス導波路構造および外部との接続による解析をし、伝搬損失を抑制する構造を検証する。また、実装向けのデバイス設計やマイクロ加工プロセスの最適化を行い、光特性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は今年度の国際学会にオンラインで参加し、旅費を使用しなかったためである。令和5年度請求額と合わせて、令和5年度で計画したデバイスの作製および特性評価の遂行に使用する予定である。
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