研究課題/領域番号 |
22K14587
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
見波 将 京都大学, 工学研究科, 助教 (10876840)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 熱電効果 / 異常ネルンスト効果 / 異常ホール効果 / トポロジカル磁性体 / ベリー位相 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、異常ネルンスト効果を活用した環境発電デバイスの実現を目指し、巨大な異常ネルンスト効果を発現する磁性体の探索とその発現機構を解明することを目標としている。本年度は材料探索の範囲を典型的な磁性材料から二次元系へ材料探索の範囲を拡大し、ファンデルワールス結晶などを対象とした、磁性に由来する電子状態や量子輸送現象の解析を第一原理計算により行った。強磁性ファンデルワールス半金属であるFe3GeTe2において、異常ホール効果がフェルミエネルギーの下に沈んでいるフラットバンドに由来する状態密度の発散により増大されることが明らかとなった。組成の調整によりフェルミエネルギーを調整することで大きな異常ネルンスト効果が実現できる可能性が示唆された。 また、異常ホール効果を効率的に計算できるプログラムも新たに実装した。従来では第一原理計算で得られた波動関数を実空間上の原子軌道へ射影するプロセスが必要となり、これが計算機上でのボトルネックとなっていた。新たに実装したプログラムではこれらのプロセスを介さず異常ホール効果や異常ネルンスト効果が計算可能となり、より、大きな系や複雑な磁気構造への適応が可能となった。 今後は反強磁性相などの準安定状態における量子輸送現象の系統的な解析に取り組む予定である。また、格子ひずみや不純物の効果による量子輸送現象の応答や磁気構造の熱的安定性などのより工学的な課題にも取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
典型的な磁性材料から二次元系へ材料探索の範囲を拡大し、異常ネルンスト効果の評価とその起源の解明を第一原理計算を用いて継続的に進めている。強磁性ファンデルワールス半金属であるFe3GeTe2において、巨大な磁気光学応答が観測された。第一原理計算による詳細な電子状態の解析の結果、実験的に観測された磁気光学応答のピークが、フェルミエネルギーの下に沈んでいるフラットバンドに由来する状態密度の発散に起源があることが明らかとなった。類似した系として、磁性元素をドープした遷移金属ダイカルコゲナイドCoNb3S6において反強磁性であるにも関わらず巨大な異常ホール効果が観測された。第一原理計算によりその電子状態の解析を報告した。また、異常ホール効果を効率的に計算できるプログラムも新たに実装し、従来の計算手法よりも効率的に計算が可能になること報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新たに実装した計算手法を活用し、より大きな系や複雑な磁気構造での異常ネルンスト効果の解析に取り組む予定である。また、格子ひずみや不純物の効果による量子輸送現象の応答や磁気構造の熱的安定性などのより工学的な課題にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた国内、国際学会がオンラインによる開催となり、申請書提出時に予定していた支出額よりも少なくなったため。翌年度分についてはオープンアクセス誌などへの投稿料や計算機の購入代に充てる予定である。
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