研究課題
本研究の目的は、偏光依存全光型磁化反転を膜構造・パルス幅・波長の3条件からアップデートし、磁気記録媒体への応用と同時にその物理の発展に貢献する新展開を創出することである。これまでに円偏光X線自由電子レーザー(XFEL)パルスを用いてPtの内核準位から外殻準位へと電子を励起することで、Pt/Co/Pt多層膜の磁化を反転できることを発見した。そこで、今年度は、この硬X線領域における新奇な偏光依存全光型磁化反転のダイナミクスを解明することに注力した。昨年度に開発した独自の測定システムを用いて、円偏光XFELパルスによりPt/Co/Pt多層膜を強励起した後に生じる磁性と透過率の変化を時間分解して同時に測定した。その結果、光励起後300fs以内に磁性と透過率が急激に減少することがわかった。減磁の大きさと緩和がXFELの円偏光状態に依存して変化する一方で、透過率変化はXFELの円偏光には依存しない。観測された円偏光XFEL誘起の超高速な減磁に磁化反転の傾向が確認されないため、硬X線領域における偏光依存全光型磁化反転は多数の円偏光XFELパルスの効果が蓄積して実現するとわかった。円偏光XFELパルスを用いた元素選択的な内核-外殻励起に由来する超高速な減磁を観測した例はこれまでにない。このことから、本研究で得られた成果が、偏光依存全光型磁化反転を含む磁性体の超高速分光に関する研究分野において、新たな展開の創出するものであると期待される。
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