研究課題
窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)はそのバンドギャップエネルギーが深紫外波長域に対応していることから深紫外発光素子応用に有用であり、励起子束縛エネルギーが室温以上であることから従来の用途に加えて量子光学応用に適した物性を有する。また窒化物半導体の最安定相であるウルツ鉱型構造はc軸方向に反転対象が欠如していることから極性を持ち、+c面(N極性(000-1))と-c面(III族極性(0001))では逆方向の分極(自発分極・圧電分極)を有する。窒化物半導体の極性面成長において、分極効果は電子と正孔の波動関数の重なり積分を小さくして発光効率を低下させる量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られている。本研究では、このQCSEとなる分極効果を逆手にとり、量子光源応用にも有利な物性を有する窒化物半導体において、量子ドットのような局在化したエネルギーポテンシャルの作製方法として、結晶極性起因の逆符号分極電荷の導入を提案している。具体的には、AlNの結晶極性起因の逆符号分極電荷により、分極効果によるAlGaN量子構造のエネルギーポテンシャルの局在化を行う。2022年度は、積層方向に極性反転したAlNテンプレートの作製条件を不純物濃度の観点から詳細に調べ、最適化することができた。さらに、この上にフォトリソグラフィ、ドライおよびウェットエッチングを行うことでAl極性(+c面)とN極性(-c面)が交互に存在するストライプ構造を作製することができた。特にKOHを用いたN極性(-c面)のウェットエッチングにおいてはハードマスクが必要であることを明らかにした。この上にMOVPE成長を行い表面の極性の確認を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りに、積層方向極性反転AlNを利用して、+c面AlN露出プロセスを行い、その極性反転ストライプAlN構造へのMOVPE再成長まで実現している。
界面の不純物濃度を制御して積層方向極性反転AlN構造を作製するには時間を要することが明らかになったため、この作製時間の短縮化を試みる。また、MOVPE再成長後の極性の制御や表面平坦性の確保を目的として、極性反転AlNストライプ構造を作製した後の表面処理を試みる。
研究が効率的に進行し、サファイア基板購入費用やフォトマスク購入費用が結果として、予定よりも少なくすることができた。この費用は2023年度に研究者の所属機関の異動により追加の必要となった経費にあてる予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 9件、 招待講演 4件)
Journal of Electronic Materials
巻: - ページ: -
10.1007/s11664-023-10348-3
Applied Physics Express
巻: 15 ページ: 116502~116502
10.35848/1882-0786/ac97dc
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 61 ページ: 030904~030904
10.35848/1347-4065/ac55e5
巻: 15 ページ: 055501~055501
10.35848/1882-0786/ac66c2
巻: 15 ページ: 051004~051004
10.35848/1882-0786/ac6567